2010年度の数学系月例談話会


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2011年1月20日(木) 15:30ー17:00(時間にご注意下さい)
会場:自然系学系棟D棟, 5階 D509

納谷 信 氏 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
「離散群の剛性と非正曲率空間の幾何」
アブストラクト:
この講演では,離散群の剛性現象と,その研究から派生した非正曲率距離空間のある幾何的不変量についてお話しします.離散群とは可算無限群のことを意味するとし,この講演では有限生成なものを考えます.そのような群の(1つあるいはあるクラスの)距離空間への距離を保つ作用を考えたとき,そのような作用が本質的に一意的である(超剛性現象)とか,そもそもよい作用が全く存在しない(固定点性質)といったことが起こりえます.例えば,Marugulis超剛性定理は前者の現象を記述しています.一方,Kazhdanの性質(T)をもつ群はヒルベルト空間に対して固定点性質をもつことが知られています.調和写像およびランダム群の手法を用いることにより,与えられた非正曲率距離空間に固定点性質をもつ離散群が豊富に存在するための判定条件を得ることができます.そして,この条件は非正曲率距離空間のある幾何的不変量に関して述べられます.講演の前半では以上の流れを概説し,後半でこの不変量の計算や評価に関連して,現在までに分かっていることや今後の課題について述べたいと思います.ランダム群の定義や不変量の評価の問題にエクスパンダーとよばれるグラフが関わっており,ある意味でキーワードといえます.エクスパンダーは距離空間の粗(coarse)埋め込みの問題とも関わっており,時間がゆるすかぎり,エクスパンダーをとりまく幾何的な問題意識にも言及したいと考えています.


2010年12月16日(木) 15:30ー17:00(時間にご注意下さい)
会場:自然系学系棟D棟, 5階 D509

山田 裕史 氏 (岡山大学大学院自然科学研究科)
「対称群のカルタン行列にまつわる組合せ論」
アブストラクト:
対称群やその岩堀-ヘッケ環の「カルタン行列」は何の変哲もない自然数行列であるが, そこに組合せ論が見えることを報告する. 「アフィンリー環の表現論」という巨人の肩に乗って, どのように組合せ論的に遊ぶか, ということをお伝えしたいと思っている.


2010年10月7日(木) 16:00ー17:00(時間にご注意下さい)
会場:自然系学系棟D棟, 5階 D509

高橋 大介 氏 (筑波大学大学院システム情報工学研究科・計算科学研究センター)
「最近の円周率計算」
アブストラクト:
現在,円周率πの値は小数点以下5兆桁まで明らかになっている. これはコンピュータの性能の向上だけによるものではなく, 円周率πを効率良く計算する公式の発見, 5兆桁もの数の加減乗除を効率良く計算する方法の確立, そして複数のグループによる計算競争という複数の要因が順次オーバーラップして効果を発揮してきた結果といえる. この講演ではこれまでの円周率計算の歴史について触れた後に, 円周率πという数は具体的にはどのように計算されるのか, 円周率πを計算することにどのような意味があるのか, などについて述べる.


2010年6月24日(木) 15:30ー17:00(時間にご注意下さい)
会場:自然系学系棟D棟, 5階 D509

伊山 修 氏 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
「箙の変異と団傾理論」
アブストラクト:
箙 (quiver) の表現論におけるBGP (Bernstein-Gelfand-Ponomarev) 鏡映関手は、 森田理論の観点から、道多元環上のAPR (Auslander-Platzeck-Reiten) 傾加群に 付随した導来圏同値と理解される。鏡映は箙の端点でしか定義されないものだが、 近年Fomin-Zelevinskyによる団 (cluster) 代数の研究において、一般の点に対する 変異 (mutation) が、鏡映の一般化として定義された。変異の森田理論的な解釈は、 傾理論のCalabi-Yau類似である団傾理論により与えられ、団代数の圏論化に 応用される。これらの事柄について概説をする予定。


2010年5月20日(木) 14:00ー15:00(時間にご注意下さい)
会場:自然系学系棟D棟, 5階 D509

大内 将也 氏 (筑波大学大学院数理物質科学研究科)
「いくつかの簡約可能な概均質ベクトル空間の分類結果について」
アブストラクト:
概均質ベクトル空間の理論は1961年に佐藤幹夫先生によって創始され, 以来,様々な方面で研究対象とされてきました. 特に,簡約可能な概均質ベクトル空間の分類問題としましては,佐藤幹夫先生,木村達雄先生によって分類された,既約概均質ベクトル空間の分類を中心に,現在までに多くの分類がなされてきました. 本談話会では,まず「自明な表現をもたない簡約可能な概均質ベクトルの分類」についてご紹介したいと思います. この研究の中で,木村達雄先生によるある未発表結果が本質的に分類を可能にしていること,また,裏返し変換により次々にある概均質ベクトル空間に帰着していくことにとても驚きました。. 次に,「佐藤幹夫先生によるある簡約可能な概均質ベクトル空間の分類とその未解決部分の研究」としまして,木村達雄先生,柳仁鉉氏,石井佑来美氏,浜田倫郎氏,黒澤恵光氏,神吉知博氏と共同研究を行った内容と,その中で取り組んだことについてご紹介をさせて頂ければと思います.


2010年5月20日(木) 15:30ー16:30(時間にご注意下さい)
会場:自然系学系棟D棟, 5階 D509

矢田 和善 氏 (筑波大学大学院数理物質科学研究科)
「2段階抽出法における統計的推測」
アブストラクト:
2段階抽出法は,精度が固定された推測問題に2回の標本抽出で解を与えるための統計的推測法である. 本講演では,2段階抽出法において未解決であった2次漸近一致性をもつ各種推測を求め,ジェネリック医薬品の臨床試験にも用いられる生物学的同等性の検定において,臨床試験の実施期間短縮とコスト削減のための方法論を与え,実例も紹介する. 次に,多次元統計的推測に2重縮小という新たな概念を導入し,多次元データの2段階推定に,標本数を大幅に節約してもなお精度保証を可能にする方法論を与える. さらに,マイクロアレイデータのような,データの次元数が標本数より大きな高次元小標本データにおける2段階抽出法についても紹介する. 本研究は, 青嶋 誠教授との共同研究です.


2010年4月22日(木) 15:00ー16:00(時間にご注意下さい)
会場:自然系学系棟D棟, 5階 D509

田島 慎一 氏 (筑波大学大学院数理物質科学研究科)
「微分作用素と留数計算アルゴリズム -- 計算数学との出会い --」
アブストラクト:
1997年3月に, 「微分方程式を利用することで有理関数の留数値を求めることが出来る」ことに気がつきました. その後, 計算効率の良いアルゴリズムを作ろうと幾つかの計算方法を考えましたが, 2003年に極めて高速に留数値を計算するアルゴリズムを導出することに成功しました. この計算方法は, D-加群の概念や理論を 常微分方程式系に適用することにより得たものです. 代数解析の理論を用いることで計算効率の良いアルゴリズムを構成することが出来るということは, 私にとって新鮮な驚きでした. 談話会では, 留数計算アルゴリズムの紹介と導出の際の基本的なアイデア, 応用例等について話をします.


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