1. 正則樹木(各点から出るボンドの数が一定である樹木)上のパーコレーションモデル
2. Zd (d> 6) 上の方向付きパーコレーションモデル
(1. はBarlow 氏との共同研究、2. はBarlow, Ja´rai, Slade の3氏との共同研究である。)
熱核評価に関する研究の歴史は長く、Rn 上のdivergence form 、多様体上のラプラス作用
素など、様々な空間の上の様々な作用素に関する研究が広く行われてきている。講演では、
熱核に関する研究の流れの中での当該研究の位置づけ、特にこの20年間に発展したフラク
タル上の解析学・確率過程論との関係についても触れる予定である。時間が許せば、証明の
背景にある実解析的な手法と確率論的手法についても簡単に紹介したい。
2006年10月19日(木)
13:30−14:30(時間にご注意ください)
会場:総合研究棟B, 1階 112
日本数学会賞秋季賞受賞記念 特別談話会
磯崎 洋 氏 (筑波大学数学系)
「物の中身を見る方法」
アブストラクト:
目の前の壁に大事なものが埋まっているとしよう。
壁を壊さずにその位置を知ることができないだろうか?
このような問題は現実の生活の中でよく起こる。
コンクリートの壁の中に亀裂があるかないかは建物の安全性に大きく影響する。
人間の体の中に異物(腫瘍)があったら大変だ。なるべく早く発見したい。
このような問題を扱う技術が E. I. T. (Electrical Impedance Tomography) である。
最近、この E. I. T. に関して理論的な進歩があった。
それは不思議なことに非ユークリッド幾何学に関係があった。
ある種の非ユークリッド幾何学では2点間の最短距離が円で与えられる。
このことが E. I. T. の計算の仕方に発展をもたらした。
数値計算例を見ながら最近の数学研究の様子を解説する。
2006年9月7日(木)13:15−14:45
芥川 和雄 氏(東京理科大学)
「山辺不変量について」
アブストラクト:
コンパクト可微分多様体 M の体積1のリーマン計量全体の成す空間上の
全スカラー曲率汎関数の臨界点は,
アインシュタイン計量であることが知られています.
山辺不変量は,
この変分問題より生じる非常に自然な M の微分位相不変量です.
与えられたリーマン計量の共形類の中で全スカラー曲率の下限をとると,
山辺定数あるいは山辺の共形不変量と
呼ばれる共形不変量が定義されます.
これをすべての共形類にわたって上限をとったものが
山辺不変量です.
本講演では,スカラー曲率やその共形変形の説明から始め,
山辺定数を与えるリーマン計量の存在問題(いわゆる山辺の問題)
などを簡単に解説し,
山辺不変量に関しての最近の発展までを紹介したいと思います.
山辺不変量にかかわる数学が,微分幾何と非線形解析・微分トポロジーなどとの
交差する場所に位置することを感じ取って頂ければ幸いです.
2006年6月29日(木) 15:30−17:00
佐伯 修 氏(九州大学)
「可微分写像の特異ファイバーとその応用」
アブストラクト:
可微分多様体が与えられたとき、そのトポロジー
を調べる有効な手法の一つは、多様体上の可微分関数で
その特異点が良い振る舞いを持つもの(すなわちモース関数)
を用いることです。その拡張として、関数の代わりに
一般次元のユークリッド空間への「良い」写像を用いる方法
があります。本講演ではその歴史的背景について簡単に
触れた後、そうした写像の特異ファイバーの理論の
起こりと最近の発展について解説します。特異ファイバーとは、
可微分写像による1点の逆像で特異点を含むもののこと
で、特異点を持った写像のトポロジー的情報がそこに
詰まっていることを理解していただければ幸いです。
応用として,4次元多様体の符号数公式や、曲面束の
特性類公式についても触れてみたいと思います。
2006年6月1日(木) 15:30−17:00
中屋敷 厚 氏(九州大学)
「テータ関数の微分構造」
アブストラクト:
楕円関数や楕円テータ関数に比べて多変数のテータ関数については
分からないことがたくさんあります。特にアーベル関数のD-加群としての構造は、古
典的に知られているH.F.Bakerの加法定理や, Frobenius-Stickelberger型の公式など
にも関係して興味深いのですが、これまで系統的に研究されることはありませんでし
た。ヤコビ多様体のテータ関数はソリトン方程式に関係してこの30年で比較的よく研
究されてきましたが、それでも今問題にしている構造についてはあまりよく分かって
いません。ここでは高次元のシグマ関数の理論や可積分系との関係にも触れながら、
知られている結果や予想などについてお話したいと思います.
2006年4月27日(木) 15:30−17:00
尾角正人 氏(大阪大学大学院基礎工学研究科)
「X=M予想について」
アブストラクト:
標題のXおよびMは両方ともアフィンリー環g、0以上の整数の列からなるデータ
およびgに含まれる有限次元単純リー環の支配的整ウェイトに依存する多項式です。
この両辺はもともと可解格子模型を解く代表的な2つの手法、角転送行列法とベーテ
仮設法に由来するものですが、現在ではアフィン量子群の表現論・結晶基底、代数的
組合せ論、さらには箱玉系(数セミ3月号にも特集されました)といわれる可積分な
セルオートマトンとも密接に関係しており、証明はまだ限られた場合にしかされてい
ません。
(Xの方は、まだすべての場合には定義がないと言った方が正確かもしれません。)
講演では、物理的・歴史的背景から始め、上に挙げたものとどのように関連している
か
お話ししたいと思います。また、最近Mの表示が対応する箱玉系のソリトンコンテン
ト
と関係することがわかってきたので、時間が許せばそれにも触れたいと思います。