線形代数II演習, 数学1クラス対象 2013年度秋学期ABC
水曜日4限 1E402
教科書:線形代数(日本評論社)


残ったB 問題
2-1(2),2-2,2-3,2-4,3-2(2),3-4,3-5(途中),3-6(2),4-2,4-4,5-1,5-2,5-3,6-1(2),6-3,7-1,7-4,7-5,8-1,8-2,8-4,8-5(3),8-6,8-7,8-8,8-10,9-1,9-2,9-3,9-5,9-7,9-9,9-10,10-1(2,3),10-3,10-4(2),10-5,10-6,10-8,10-9,10-10,10-11,10-12,10-13,11-1,11-7,11-8,11-11,12-1,12-3,12-4,12-5,12-6,12-7,12-8,12-9,12-10(2),12-11, 13-1,13-2,13-3,13-4,13-5,13-6,13-8,13-9,13-10


第14回(1/29)

第14回プリント
内容 2次形式の標準化 商空間の和とスカラー倍の定義の無矛盾性(英語ではwell-definedness という.)


第13回(1/22)

第13回プリント
問題 B-13-10 を少し直してあります.
内容 正方行列の直交行列による上三角化 同値類 商空間 疲れてきたので一休み....

[上三角行列]

上三角行列は積や逆行列をとる操作において閉じています. つまり、A,Bが上三角行列であれば、AB も上三角行列です. また、A が正則な上三角行列であれば、A-1 も上三角行列です.

[商空間]

商空間については取り上げないつもりでしたが、よくできる人もいるようなので、 思い切って取り上げてみました.商空間や商集合の概念は数学を勉強する中で 必ず出てきます. そして多くの人がぶつかるところでもあります. 高校の数学の中では出てこなかった、少し抽象度の高い概念です. 今すぐ分からなくても、徐々にでも納得できる部分を増やしていくことで、 そのうち理解できるものと思います. 焦る必要はありません.

[所感]

アンケートありがとうございました. とても参考になる意見だと思いました. 授業を進める上で参考にしていきたいと思います.


第12回(1/15)

第12回プリント
内容 [直交行列、ユニタリー行列] [実対称行列の直交行列による対角化] [実正方行列の直交行列による三角化]
ただ、この場合、固有値が実数である必要がある.固有ベクトルが複素ベクトルとなると直交行列にならないので.)
  • 正方行列 A は直交行列によって三角化(上三角行列にすること)される.
  • λをある固有値、v1 を λ の 0 でない固有ベクトルとし、正規化しておく.
  • このとき、ある正規直交基底 {v1,v2...,vn} をとり、P1=(v1v2...vn) となる.
  • このとき、行列は となる.
  • 一つ小さいサイズの行列 A1 について同じことをすることで、 となる.
  • 最終的に、 となる直交行列 B に対して
  • となり、
  • が成り立つ.
  • ゆえに、どこかの演習問題であったように、 も直交行列となり、
  • この行列によって上三角化できる.

[上三角化について]

サイズが一つ小さい直交行列からもとのサイズの直交行列を作るときに少し工夫がいると授業で いいましたが、上のようにすることで B を使って、上三角化のための直交行列を作る.

[複素行列の対角化について]

上のことは実対称行列を複素エルミート行列にし、直交行列をユニタリー行列とすることで同じことが成り立つ. そのさい、実内積は複素エルミート内積にする.

[直交変換、対称変換]

直交変換は直交行列を一般の線形写像に対して定義したものであるが、 この場合線形空間に内積をいれておく必要がある. そのさい、直交変換 T は (T(v),T(w)=(v,w) を満たす線形写像である.

対称変換は実(標準)計量ベクトル空間の任意の v, w に対して、(T(v),w)=(v,T(w)) を 満たすような線形写像 T のことである.

他の線形写像(ユニタリー変換、エルミート変換など)も同じように定義することができる.


第11回(1/8)

第11回プリント
内容 [最小多項式] [対角化可能と最小多項式] [An]

[ケイリーハミルトンの定理との比較]

ケイリーハミルトンの定理は、ΦA(A)=(A−λ1E)m1(A−λ2E)m2...(A−λrE)mr=O となることであるが、最小多項式はこの性質を満たすような指数を最小にした多項式である.


第10回(12/18)

第10回プリント
内容 [対角化] [対角化可能となるための必要十分条件1] [P を求めること] [対角化可能であるための十分条件1] [対角化可能であるための十分条件2]

[対角化可能の続編は来年]

次の授業は来年です.よいお年を.

[所感]

だんだんと解く人が多くなって気がします.授業中に全部は見きれないと思うので、TAに解答を見てもらってください.


第9回(12/11)

第9回プリント
授業中に言った訂正は全て直してあります.

内容 [固有値、固有ベクトル、固有空間] [線形写像の固有値、固有ベクトル、固有空間]

[固有空間の次元]

固有空間の次元はいつでも 1 以上になります.


第8回(12/4)

第8回プリント

内容 [正射影(直交射影)] [補空間] [直交補空間]

[ベクトルに対称な位置]

直交射影を応用して、直線に対して対称な位置を求めることができる.(宿題をみよ.)与えられたベクトルから 垂線を下ろし、さらに同じ分だけ延ばした位置がベクトルに対称な位置である.


第7回(11/27)

第7回プリント

内容 [計量ベクトル空間] [シュミットの直交化.]
[ (x,x) ]

複素内積空間では、(x,x) を成分を入れ替えると、(x,x)=(x,x) であるから、複素共役をとっても同じなので、 (x,x) は実数ということになる. また、上の記述から、非負の実数である.

[ 計量ベクトル空間 ]

なぜ、計量を考えるのか?ズバリ、長さを測りたいから. 簡単な答えですが、ベクトル空間のような真っすぐな空間があれば、ものさしを使って長さ、分度器を使って角度を測りたくなりますよね? そんなとき、そのものさしや分度器にあたるものが計量(内積)です. 普通は、xy = x1y1+...+xnyn というよく見る内積を使いますが、 ものさしの選び方によってそうではないかもしれません. 例えば、(1,0,0) の長さを2、(0,1,0) を長さ3、(0,0,1) を長さ 4 として定めても矛盾なく 計量を定義することができます. 通常よりものさしの巾が大きいと思ったらよいかもしれません. ただ、測る上でどうしてもはずせないのが、上に書いた内積の満たすべき条件です.


第6回(11/20)

第6回プリント

内容 [退化次数、階数.] [次元公式.]
[例えば、]

線形写像 F:V→W に適当な基底、v1,v2,...,vn を それぞれ、基底、w1,w2,...,wn に移すとする. つまり、F(vi) = wi を満たすとすると、これらを基底として 選んでおけば、表現行列として、単位行列 E が選べる. もちろん同型写像なので、rank(F)=n であり、null(F)=0 となる.

[所感]

表現行列を使う演習は2回目ですが、大分慣れてきていると思います. 今日は用意した問題が殆ど解かれて良かったです. もちろん前回出した問題を発表問題として解いてもかまいません.


第5回(11/13)

第5回プリント

授業中訂正した問題B-5-1も訂正してあります.
内容 [表現行列.] つまり、

[問題C-3-1(後の方のもの)]

問題には、どのようなベクトル空間で行なうのか指定されていませんでしたが、多くの人がC3 で行なっておりました。 そのような解答はもちろんは正しいですが、この場合、自分で指定して行なってもそれはそれでにしています。 こちらの問題の不備でもありますので、もし、間違っているかどうか分からない人は次回の時に申告して下さい。 点数を変更するかもしれません。

[所感]

表現行列の説明の難しさを感じました.なんとか来週も表現行列をやって理解しましょう.


第4回(10/30)

第4回プリント


内容 [直和.] [< v1,v2,...,vn> の基底を求める問題.]

[一次独立なベクトルの最大数]

S={v1,v2,...,vn} の一次独立なベクトルの最大数が r であるとは、 S の中で r 個の一次独立なベクトルが存在し、S の中の任意のr+1 個のベクトルが一次従属であることである.

これは定義であるが、実際最大であることは、行列を基本変形をして出てきた基本ベクトルの個数(先頭列の個数=rank) が一次独立なベクトルの最大数となる.

[同値なこと]

{v1,v2,...,vn} の一次関係全体 ⇔ a1v1+a2v2+...+anvn=0 となる式全体
⇔ A=(v1 v2...vn)とおいたときに、Aa=0 の解 a 全体.
⇔A'a=0 の解全体. A' は A の(行による)簡約階段行列 A'

[所感]

抽象的な議論が増えてきました. 分かったような分からないようなところがあると思いますが、もやもやしたところは 議論が完全に頭の中で抽象化されていないのだと思います. 数学では、同じ集合上同じ条件を満たすものは同じとみなします. 言い方が違っても実質的に同じものだったりするわけです. 例えば、行による基本変形では、見かけ違う方程式だが、解の空間は同じです. また、その解の空間は一次関係式全体だったりします.つまり、基本変形しても一次関係式は変わらない. このような議論がよどみなく出来るようになるには少し時間をおいて、またしばらくして考えれば当たり前だと感じるものです.

ちなみに、数学では違う集合上のものは同じとは普通見なしません. 例えば、3次元の数ベクトル空間と2次以下の多項式全体はベクトル空間としては同じ(同型)ですが、 数学的には同じとはみなしません.違う集合の間に単にベクトル空間としての同型写像があるというだけです. もちろん、抽象的にベクトル空間としてだけ、つまりどんな同型写像か考えない場合には、両者は同じとみなすこともできます. しかし、多項式と数学とる空間の決定的違いは、多項式には"掛け算"が存在することです. ベクトル同士には普通には掛け算は存在しません.


第3回(10/23)

第3回プリント


内容 [基底.] [次元.] [一次関係のなすベクトル全体.]

[抽象ベクトル空間の同一視]

抽象ベクトル空間の場合は、数ベクトル空間に焼きなおして考えよと言いましたが、この焼きなおしを 数学の言葉で言うことができます. 同型という概念です. これは、抽象的で分かりにくいベクトル空間をよく知っている数ベクトル空間に全単射な線形写像(同型写像という)で同一視 することです. 一般に、抽象ベクトル空間から抽象ベクトル空間への全単射線形写像のことをいいます.

[Remark1]

dim(V)=n となるベクトル空間 V のベクトル {v1,...,vn} が一次独立であるとすると、 それは基底となる.

[Remark2]

dim(V)=n となるベクトル空間 V の任意のベクトル {v1,...,vn+1} は一次従属である.

[Remark3]

数ベクトル空間の中の部分ベクトル空間 V={vCn|Av=0} の次元は dim(V)=n-rank(A) と計算できる.

[所感]

今日は積極的に解く人が多かった気がします ^^). 発表することは最初は恥ずかしいかもしれませんが、慣れてきたり、他の人が発表していることを聞いているうちになんでも なくなってきます. また、問題をなんとなく解けるがどのように説明していいかわからないというのもまだ、 完全に理解していないと考えてよいでしょう. 人に説明して、初めてすっきり理解できるということがあります. また、「○○を証明せよ」と言っているのに、「○○が成り立つので、云々」 というのは説明(少なくとも証明)にはなっていません. 「○○を証明せよ」ということは、なぜ○○が成り立つか数学的に説明せよというわけですから、 ただ成り立つからでは憶測にすぎません. 成り立つからには定義を用いてなんとか導かなければなりません. よくあるからというのでは証明にならないのと一緒です.


第2回(10/9)

第2回プリント


内容 [ベクトル空間と線形写像.] [一次関係の求め方.] 非自明な一次関係とは全ての係数が 0 ではない一次関係のことです.

[抽象ベクトル空間]

抽象ベクトル空間とは数ベクトル空間を抽象化したものです. 気分でいえば、平たい、真っ直ぐな空間です. この3次元の宇宙空間は真っ直ぐな構造を持った数ベクトル空間とみなせますが真っ直ぐと 思える空間は数ベクトル空間だけではありません. そのためには真っ直ぐなという概念を数学の言葉にする必要があって、 それが、ベクトル空間の公理です. それを持つものは全て真っ直ぐな直感を持っています. 例えば、多項式全体の集合でもそうです.数ベクトル空間への連続な関数全体でもそうです.

[線形写像について]

線形写像について授業であまり云わなかったのでここで補足しておきます. 線形写像であるためには上の2つの条件を満たすことですが、

f(v+w)=f(v)+f(w)
の1つ目の足し算は V の中での足し算であって、後半の足し算は W の中での足し算です.また、
f(α⋅v)=α⋅f(v)
の2つ目のスカラー倍は V の中でのスカラー倍で、後半のスカラー倍は W の中でのスカラー倍です. 同じ + の記号を用いているのでややこしいのですが.

足し算とスカラー倍はベクトル空間を定義している構造ですが、線形写像とはその構造を保ったまま 写り合う写像ということになります.

[C-2-2について]

C[x] は多項式全体を表します. 問題にしている写像は、任意の多項式 f(x) から、その多項式の 2 次以下の部分の項を取りだす写像です.

[所感]

今日は抽象ベクトル空間の初日というだけあって、多くの人が戸惑ったのではないでしょうか? いろんな問題を解いたり、本を読んだり、先生の話を聞いたり、友達の発表を聞いているうちにそのうちどんなものか分かってくると 思います. 抽象ベクトル空間なんてよく分からないと思う前に粘り強く頑張ってください. 分かってしまえばそんなに難しいことはありません.

質問する人が少しずつ増えてきています. 教科書を読んでいてもなかなか分からないことも多いです. 授業では積極的に取り組んで、少しでも何かを掴んで帰ってください.

発表する問題がやや難しいと感じつつあります. そのうち簡単な問題も発表問題にしたいと思います.


第1回(10/2)

第1回プリント


内容

[行変形の役割と列変形の役割]

Ax=0 を解くには行列 A に行変形をして方程式を簡単にします. さらに簡約階段行列にまで持っていけば、解の変数のうちパラメータに当たる部分と それに従属する部分が完全に分離できるようになります. つまり、従属する変数は、先頭列の分(rank(A)) だけ登場し、解のパラメータは(n-rank(A))だけ存在します.(このことは後に一般化された形でキチンと説明されます!) ここで、n は方程式の全ての変数の数です.

なので、連立方程式を解くには行変形だけをしないといけません. それを証明するのが問題 B-1-1です. 連立一次方程式を解くときに行変形だけをする理由がここにあります.

逆に、列変形をしてしまうと、解空間がどんどん変わっていってしまいますが 像の空間 Im(LA) の記述を簡単にすることができます. このときに行変形をしてしまうと今度は Im(LA) が変わってしまいます.

[授業中の質問に関して]

どうしてそうするの?とか、 どういう意味があるの?など 素朴な疑問、何をすればいいかわからないなどありましたらいつでもその場で聞いてください. 教官は教祖のように間違ったことは決して言わないというわけではありません. その場で解決できなければ次の授業、もしくは、このページを借りて 答えていければと思っています. (最初の問題で既に間違えて解いてしまった...(とほほと言いたいところだけど死語っぽいのでやめておく.))

[所感]

今日は第一回目の授業ということで少し慌ててしまったところもありますが、授業時間内に解く問題を 少しずつ増やしながらも、発表するというスタイルでいけたらと思います. また、時間節約のため、発表問題を最初に持っていくかもしれません.
後ろに黒板がありましたね. 授業が始まる前に発表したい人は他の人と相談の上、後ろの黒板書いておいてください.



質問、授業の感想、ホームーページの感想などあれば以下のアドレスまで。
tange  (あっとまーく)  math.tsukuba.ac.jp ((あっとまーく)=@)
部屋はB622です。気軽にお越しください。
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