線形代数III演習 2012年度3学期 水曜日5限

残った問題
1-1(3) 1-2 1-4(2)
3-1(4)
5-1(3-a)(4) 5-2(1)(2) 5-3(2)
6-3(3)
7-1(2) 7-2(1)(2) 7-4(2)
8-1(1)(4) 8-2(1) 8-2(3)(4)(5)
9-1 9-2

最終回(2/27)

次元公式 授業中出した問題
内容 次元公式

退化次数・・・解の自由度とも言いますが、f を施して 0 になってしまう(f の像において無効化される)空間の次元のことです.
階数・・・逆に、 f を施しても生き残ってくる空間の次元のことです.

[課題8-3について(数学者における一般化の思考)]

この問題は自由な発想を求める問題で、特に決まった答えは用意してませんでした. 様々な解答が寄せられており、大変感激しました.

ベクトル空間の足し算は直和で定義されているとしたときに、引き算はどのように定義されるかという問題です. 一般化する際足がかりとするのは次元公式です. この足がかりとなるものが何かによって答えは違って来たりします. V"+"W(この場合直和)ならば、dim(V)+dim(W)=dim(V"+"W) となる. それなら、V"−"W がもしあれば、dim(V)−dim(W)=dim(V"−"W) となるのではないかということです. (もし dim(V)<dim(W) ならどうしようとかこの際目をつぶることにして) つまり、次元が下がるようなことをすればよいわけです. ここで次元とは基底の数だったから、 基底をいくつか選んで捨てればよいと気づくわけです. つまり、W⊂V の場合を考えることになります. ということは V=<v1,...,vn> でしたら、W=<v1,...,vm> として、V"−"W=<vm+1,...,vn> とします. 実際このような解答は多く見られ、十分な解答ですが、問題があります. 基底を自分で選んでいるということです. どのような基底をとっても補空間の次元は変わりませんが、ベクトル空間はそれぞれ違うものになってしまっています. V の部分空間として違う. ちなみに2項演算とは2つのものから1つのものを作らなければなりません. ここで思考ストップして、3学期の授業の内容は終わりですが、教科書の6.9章にはそれを解消するための方法が書かれています. 商空間といいます. 数学では同値類(商)をとるといいます. 商と言っていますが、ベクトル空間の場合はまさに次元の引き算に当たるものです. つまりいろいろと取り方があった補空間をひとまとめにする方法です. その詳細はどこかで習うとして、簡単にいうと、W⊂V のときに、 商空間 V/W の元において、任意の v∈V, w∈W としたときに、

v+w"="v
とするような "=" を新しく定義するということです. つまり、基本的に V の元を考えるのだが、W の元は全て 0 として考えるということです. (W の元が出てきたら無視しなさいということつまりその元を 0 とみなしましょうということです.) よって、V/W の中の任意の1つの元は
v+W
のように書けます. (この書き方は慣れるまで少々難しいですが、2項目の W は集合なのですが、無視した W の元のはきだめのようなものだと 思ってください.) 丁度、W のパートは解析学のランダウの記号 o(xn) のようなもので、高次の項は無視しなさい というのと本質的に変わりません. このとき、足し算は、
(v+W)+(v'+W)"="v+v'+W
となります.ここで、W は部分空間なのでベクトルの足し算について閉じています. それを W+W"="W と表現しています. (ランダウの記号のときも、o(xn)+(xn)=o(xn) であるが、それぞれ 0 というわけではない という考察をして、高校数学を習ったばかりの諸君の度肝をぬいたことは記憶に新しいわけです。) 結局、商空間の考え方は = の意味を変えることで新しいベクトル空間を作る方法です.

発展として、W⊂V でない場合にも V−W を形式的に定義することでできる理論もありますが、これ以上はやめておきましょう.

[自然数から整数を作る正当的な構成法]

まずここでは自然数 N を 0を含めた 0,1,2,3,...としておきます. このとき、2つの自然数の足し算は再び自然数です. このことを N は足し算について閉じているといいます. しかし、任意の 0≠n∈N に対して n+m=0 となる m∈N は存在しません. このような m のこと n のを逆元と言います. 任意の整数はそのような任意の n に対して逆元をただ一つ持ちます. つまり、整数は自然数に逆元を付け加えた数の集合ということになります. 負の数の起源についてはこちら(wiki)を参照. 以下のこともこのwikiのページにも載っています.

N×N の元 (a,b) に対して、a−b を対応させる写像

π: N×NZ
(a,b)→a−b
を使うと、Z に全射が作れます. ここで、写像 π の任意の1点の逆像をそれぞれ、1点につぶす(同一視する)ことで、整数が構成できます. つまり、(a,b)"="(a+1,b+1)"="(a+2,b+2)=... のような規則で新しいイコールを導入する(等しいと思う、もしくは同一視する)ことで、a−b の逆像を全て1つにつぶすことができます. このような新しいイコールを ∼ と書くことにする. このとき、足し算を整数の足し算から誘導されるようにするには、
(a,b)+(c,d)→a-b+c-d
(a+c,b+d)→a+c−(b+d)
となるので、(a,b)+(c,d)∼(a+c,b+d) とすればよいことがわかる. (a,a)∼(0,0) が 0 に相当する.
(a,b)+(b,a)∼(a+b,a+b)∼(0,0)
なので、逆元 −(a,b) は (b,a) で定義すればよいのです. このような新しいイコール(この場合 ∼ )を入れる操作も同値類といいます. N×Nに新しいイコール ∼ を導入したものと Z は数として全く同じものです.(このことも同型と言ったりします.) こうして、2つの自然数から整数と同じものが構成できました.

この操作を実体化すると、

のような絵になる.(正確な絵でないので等間隔になっていませんが...) この赤い部分を1点ととする、もしくは斜め45度傾けてみてみると、赤い線が整数個並んでいることが分かるはずです.

[課題8-3の出題に関して科学的な見地から]

解答はいろいろとありましたが、意味があるかどうかわからない問題でも真剣に取り組んで 何か意味を見出そうとするということは科学者としてだけではなく人としてはよくあることです. 何か面白い言い訳を思いつくようなものかもしれません.
非科学者としては(いわゆる)誤魔化しやレトリックといったものも含まれる場合があります. しかし、科学者の姿勢は、どこが不明瞭なのか?どの対象が未定義なのかをよく考えることで正当化していくことに あります. 科学者的な立場を貫き通せば、比較的人からだまされにくくなるでしょう. レポートの採点は一科学者の視点からのコメントです. 良いと思われるものに関しては授業全体の評価にプラスアルファされます.


第8回(2/20)

表現行列 プリント (課題〆切2/27の授業まで)
内容 表現行列(準備) 表現行列(基底を取って行列で表現しよう.)(tは行列やベクトルの転置で、左上に置くとする.)


第7回(2/13)

線形写像の作り方、基底の延長の仕方 プリント (課題〆切2/20の授業まで)
内容 線形写像の作り方 基底の延長

写像について
写像とは以下の性質を満たすものです.とりあえず、V, W は線形構造を忘れて単なる集合と考えます.

ここで大事なことが2つあって、上でオレンジ色で強調しました. つまり、 V の任意の元に対して対応があること.また、v に対してただ一つに W の元がきまること. です. ですから、 V の元に対応がないものがあっても写像ではないし、W の元が1つに決まらなくても写像ではありません

v1,v2,...,vm が基底でないと f は一意的に決まらない.というのは 以下のことがあるからです. 基底でなければ v に対して v1,v2,...,vmの線形結合の書き方が2通り以上ある場合があります. つまり、c1v1+c2v2+...+cnvn=c1'v1+c2'v2+...+cn'vn と書けたとすると、 c1f(v1)+c2f(v2)+...+cnf(vn)と c1'f(v1)+c2'f(v2)+...+cn'f(vn)が 値が違うかもしれません.


第6回(2/6)

部分ベクトル空間の次元の和の公式、線形写像、0次元ベクトル空間 プリント (課題〆切2/13の授業まで)
内容 V1+V2 の次元を与える公式. 線形写像 f : V→W ベクトル空間 {0}

固有値、固有ベクトルに関して

2学期の復習ですが、固有値に対してその固有ベクトルは性質上零ベクトルにはなりえません. 固有ベクトルを求めようとして、キチンと計算をしないと(例えば、符合をミスったり、簡約化の計算ミスをしたりすると)大体は零ベクトルになってしまうことが多いです.なので固有ベクトルを計算してちゃんと零ベクトルが出てくれば自分の計算は合っていると思ってもよいでしょう. 零になってしまったらどこかで必ず計算ミスをしています.(分かりやすいですね.)(これの文章がどういう意味か分からない人は質問、メールなどしてください.)

課題4-3(1)の解答

今日返却した課題4-3(1)はできている人は一人かしかいませんでした.ここで答えを書いておきます.ほとんどの人は意味不明の解答でした. A は n×n 行列で、(さらに対角行列)C[A]とは

{a0E+a1A+...+amAm|aiC}
となる集合です.ここで m は与えられた数ではなく、任意の数です.つまりなんでもいい.つまり A を変数とした多項式と思っているわけです.

示すべきことは C[A] が n 次元以下であることです.仮定として A が対角行列ですが (1) の解答のためにはそれは使いません. パラメータが a0,a1,...am といくらでもあるのに何故か n 次元以下で抑えられてしまいます. 普通多項式は次元は無限次元です.1, X, X2, X3,....とどれだけあっても次数の高い多項式を有限個の Xi だけでは捉えきれません. なのに有限の n で抑えられるというわけです.

その秘密はケイリーハミルトンです. n×n行列 A はある係数 aiC に対して

An+an-1An-1+...+a1A+anE=O
という関係式があります. この場合(C[A] においては)、1次関係式です. もちろん、これに A を両辺に掛けた
An+1+an-1An+...+a1A2+anA=O
も成り立ちます. ベクトル空間としては、n 以上の m に対して、 Am はそれ以下の次数の Am-1,Am-2... の1次結合で書けることが分かります. よって、このことから、 Am を置き換えて、C[A] の 全て n 以上の指数をもつ A のべきの項を小さくすることができます. 結局 C[A] の任意の元は E, A, A2,..., An-1 の1次結合でかけることになります. つまり、
<E,A,A2,....,An-1>
ということになります.左辺は次元は n 以下ですので、求める不等式が成り立つことになります.


第5回(1/30)

ベクトル空間の直和 プリント(課題〆切2/6の授業まで)
問題5-2(1)はあるs,tで満たさないことを示すだけでよいです.任意のs,tでならないことを示さなくてもよい.
問題5-2(2)HINT訂正("任意の2つの固有空間"を削除)
内容 ベクトル空間の直和. V∩W を求めること

v1,v2,..,vn が1次独立で、v,v1,v2,..,vn が1次従属であれば、v は v1,v2,..,vn の1次結合でかける.(証明は授業中にしたとおり.)

ベクトル空間 {0}≠V=<v1,v1,..,vn> において、この中からいくつかベクトルを選べば、それを V の基底にすることができる. つまり、V=<vn1,vn2,..,vnk> (1≤ni≤n) であり、{vn1,vn2,..,vnk} は 1次独立.

先週の問題は固有値を求めるところで大変な数になってしまったようですね。 本当は固有値が整数になる予定でしたが、数値を入れ間違えてしまったようです。 それも2問とも。とほほ。すいませんでした。


第4回(1/23)

部分ベクトル空間、次元 プリント(課題〆切1/30の授業まで)
プリントのミスプリ直してあります。(課題4-3:...出かける行列全体をの-> で書ける行列全体の集合を)
内容 部分ベクトル空間であること. 部分ベクトル空間のイメージ 部分ベクトル空間の例 ベクトル空間の次元について

正方行列 A の固有値 λ とは、|λ E-A|=0 を満たす複素数のことで、 固有値は、ある零でないあるベクトル xに対して、 Axx を満たします. このベクトルの方向では、行列は定数倍として作用するということを意味しています.
ΦA(x)=|x E-A| を固有多項式といいます.

固有値 λ に対する固有空間とはこのような固有値に対して、 Axx 全体の集合を指し、 数ベクトル空間の部分ベクトル空間になっています. 固有値を求めたり、固有空間を調べることで、行列 A の性質が分かってきます.
固有値は、A をある正則行列 P を使って P-1AP に変えて行っても固有多項式(もちろん固有値も)やその 固有空間の様子は変わりません.特に固有空間の次元は一致します.

ΦA(x)=ΦP-1AP(x)

抽象ベクトル空間と数ベクトル空間の違い.

数ベクトル空間を抽象化するとどうなるのか. 抽象ベクトル空間は、次元 n であれば、n 次元数ベクトル空間と同型写像を作ることができます. つまりそれらはベクトル空間として全く同じものです.では抽象ベクトル空間が数ベクトル空間とどこが違うのかというと、 標準的な基底がないことです.

数ベクトル空間 Cn には {t(0,...,0,1,0,...0)} という標準的な基底があります. (つまり、成分のどこかが 1 でそれ以外は 0 の n 個のベクトル.) しかし抽象ベクトル空間にはこのような決まった基底がありません. 例えば、連立1次方程式 Ax=0 を解いたとき、その解 v はパラメータ c1,c2,...,ck と ベクトル v1, v2,...,vk を使って、

v=c1v1+c2v2+...+ckvk
のように書けます. つまり、解空間は部分ベクトル空間<v1, v2,...,vk> となります. しかし、vi は一般のベクトル(上のような標準的なベクトルではない)であり、そのとり方は解き方によって違ってきたりします.


第3回(1/9)

ベクトル空間、基底 プリント

(NEW!!) 第3回のプリントのヒント集
内容 抽象ベクトル空間 行に関する基本変形 基底

V=<v1,...,vn> とする. {v1,...,vn}のうちで、最大個数の1次独立なベクトルを vi1,...,vik とすると、vi1,...,vik は V は基底をなす.
問題は基底の性質の2つ目だが、v=a1v1+...+anvn=a'1vi1+...+a'kvik となることを示せばよい.
そのためには任意の vjvi1,...,vik の1次結合で書ければよい.
vjvi1,...,vik に入っていれば問題ない. 入っていないときも

vj=c1vi1+...+ckvik
と書けるだろうか? 実は、{vj,vi1,...,vik} は1次従属である. よって係数c1,...,ck の存在がいえる.(←証明せよ.よくある議論.)


第2回(12/19)

数ベクトル空間 プリント

内容 線形写像 f: Kn→Kmとする.
部分空間 Im(f) について. 一次独立なベクトルの最大個数(a1,...,an, b1,...,bnをベクトル、c1,...,cn をスカラーとする.)

(縦)ベクトルに行列 A を左から書けることで得られる写像 f は線形写像です(x→ Ax のように). A=(a1...an)とします.

Ker(f) を求めることは Ax=0 という連立一次方程式を求めることと同じです. よって、A=(a1...an)をだけの基本変形を用いて簡約化をすること によって方程式を簡単にし、連立方程式の解集合( Ker(f) )を求めることができます.

Im(f) は、Im(f)=<a1,...,an> ですが、 A の列の基本変形をした行列を B=(b1...bn) としても、Im(f)=<b1,...,bn> となります. よって、の基本変形だけを使って簡約化することで、Im(f) の中から一次独立なベクトルを求めることができます.

a1,...,an の間の非自明な一次関係とは、(0,0,..,0) でない係数 (c1,c2,...,cn) を使って c1a1+c2a2+...+cnan=0 が成り立つことである.

集合V がベクトル空間であることの証明について。(K をスカラーとなる体とする.)

課題2-3では Hom(K2,K) 上ベクトル空間の構造をどのように入れるかがまず問題である.


第1回(12/5)

2学期までの復習、線形性 プリント

内容 連立1次方程式. 線形性.

行列を簡約化する形で解く方法は少なくとも受講者全員!!は必ずマスターしておくこと. 3学期の最重要課題.

課題にある、像と核を求めよという問題は、像と核となる数ベクトル空間の集合を連立方程式を解く形にもっていくということです。 つまり、

x0+c1x1+c2x2+....+cmxm
の形にしてください. ここで、xi はベクトルを表し、ci は任意のスカラー(つまりKの元)を渡る.


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