線形代数III演習 2012年度3学期 水曜日5限
残った問題
1-1(3) 1-2 1-4(2)
3-1(4)
5-1(3-a)(4) 5-2(1)(2) 5-3(2)
6-3(3)
7-1(2) 7-2(1)(2) 7-4(2)
8-1(1)(4) 8-2(1) 8-2(3)(4)(5)
9-1 9-2
最終回(2/27)
次元公式 授業中出した問題
内容
次元公式
V,W をベクトル空間として、 f:V→W を線形写像とします.
このとき、null(f)=dim(Ker(f)) とし、rank(f)=dim(Im(W)) とします.
それぞれ、退化次数、階数といいます.
このとき、以下の式が成り立つ.
数ベクトル空間なら以下のことを言っています.
A を m×n のサイズの行列とする.
dim({x∈Cn |Ax=0})+rank(A)=n
つまり、連立方程式 Ax=0 の解の次元(解の自由度)はn-rank(A) だけあるという公式です.
A を(行の基本変形により)簡約化していくと、最終的に縦ベクトルに基本ベクトル(標準基底)が
現われる部分とそうでない部分に分かれます.
前者の数が rank(A) (定義通り) で、後者は解の自由度に相当します.
縦ベクトルは全部で n 個ありますから上の式は納得だと思います.
同じことが一般の線形写像の間にも成り立つというのが最初の式、(null(f)+rank(f)=dim(V)) ということです.
線形写像 f;V→W は何かの基底を使えば行列 A で表現してやることができます。
この A の Im(A) は Im(f) を表しますし、Ker(A) は Ker(f) を表します.(課題8-2参照)
ですから、一般の線形写像に関しても同じ式が成り立つことは必至ですね.
退化次数・・・解の自由度とも言いますが、f を施して 0 になってしまう(f の像において無効化される)空間の次元のことです.
階数・・・逆に、 f を施しても生き残ってくる空間の次元のことです.
[課題8-3について (数学者における一般化の思考)]
この問題は自由な発想を求める問題で、特に決まった答えは用意してませんでした.
様々な解答が寄せられており、大変感激しました.
ベクトル空間の足し算は直和で定義されているとしたときに、引き算はどのように定義されるかという問題です.
一般化する際足がかりとするのは次元公式 です.
この足がかりとなるものが何かによって答えは違って来たりします.
V"+"W(この場合直和)ならば、dim(V)+dim(W)=dim(V"+"W) となる.
それなら、V"−"W がもしあれば、dim(V)−dim(W)=dim(V"−"W) となるのではないかということです.
(もし dim(V)<dim(W) ならどうしようとかこの際目をつぶることにして)
つまり、次元が下がるようなことをすればよいわけです.
ここで次元とは基底の数だったから、
基底をいくつか選んで捨てればよい と気づくわけです.
つまり、W⊂V の場合を考えることになります.
ということは V=<v1 ,...,vn > でしたら、W=<v1 ,...,vm >
として、V"−"W=<vm+1 ,...,vn > とします.
実際このような解答は多く見られ、十分な解答ですが、問題があります.
基底を自分で選んでいるということです.
どのような基底をとっても補空間の次元は変わりませんが、ベクトル空間はそれぞれ違うものになってしまっています.
V の部分空間として違う.
ちなみに2項演算とは2つのものから1つのものを作らなければなりません.
ここで思考ストップして、3学期の授業の内容は終わりですが、教科書の6.9章にはそれを解消するための方法が書かれています.
商空間 といいます.
数学では同値類(商)をとる といいます.
商と言っていますが、ベクトル空間の場合はまさに次元の引き算に当たるものです.
つまりいろいろと取り方があった補空間をひとまとめにする方法です.
その詳細はどこかで習うとして、簡単にいうと、W⊂V のときに、
商空間 V/W の元において、任意の v∈V, w∈W としたときに、
v+w"="v
とするような "=" を新しく定義するということです.
つまり、基本的に V の元を考えるのだが、W の元は全て 0 として考えるということです.
(W の元が出てきたら無視しなさいということつまりその元を 0 とみなしましょうということです.)
よって、V/W の中の任意の1つの元は
v+W
のように書けます.
(この書き方は慣れるまで少々難しいですが、2項目の W は集合なのですが、無視した W の元のはきだめのようなものだと
思ってください.)
丁度、W のパートは解析学のランダウの記号 o(xn ) のようなもので、高次の項は無視しなさい
というのと本質的に変わりません.
このとき、足し算は、
(v+W)+(v'+W)"="v+v'+W
となります.ここで、W は部分空間なのでベクトルの足し算について閉じています.
それを W+W"="W と表現しています.
(ランダウの記号のときも、o(xn )+(xn )=o(xn ) であるが、それぞれ 0 というわけではない
という考察をして、高校数学を習ったばかりの諸君の度肝をぬいたことは記憶に新しいわけです。)
結局、商空間の考え方は = の意味を変えることで新しいベクトル空間を作る方法です.
発展として、W⊂V でない場合にも V−W を形式的に定義することでできる理論もありますが、これ以上はやめておきましょう.
[自然数から整数を作る正当的な構成法]
まずここでは自然数 N を 0を含めた 0,1,2,3,...としておきます.
このとき、2つの自然数の足し算は再び自然数です.
このことを N は足し算について閉じているといいます.
しかし、任意の 0≠n∈N に対して n+m=0 となる m∈N は存在しません.
このような m のこと n のを逆元と言います.
任意の整数はそのような任意の n に対して逆元をただ一つ持ちます.
つまり、整数は自然数に逆元を付け加えた数の集合ということになります.
負の数の起源についてはこちら(wiki) を参照.
以下のこともこのwikiのページにも載っています.
N ×N の元 (a,b) に対して、a−b を対応させる写像
π: N ×N →Z
(a,b)→a−b
を使うと、Z に全射が作れます.
ここで、写像 π の任意の1点の逆像をそれぞれ、1点につぶす(同一視する)ことで、整数が構成できます.
つまり、(a,b)"="(a+1,b+1)"="(a+2,b+2)=...
のような規則で新しいイコールを導入する(等しいと思う、もしくは同一視する)ことで、a−b の逆像を全て1つにつぶすことができます.
このような新しいイコールを ∼ と書くことにする.
このとき、足し算を整数の足し算から誘導されるようにするには、
(a,b)+(c,d)→a-b+c-d
(a+c,b+d)→a+c−(b+d)
となるので、(a,b)+(c,d)∼(a+c,b+d) とすればよいことがわかる.
(a,a)∼(0,0) が 0 に相当する.
(a,b)+(b,a)∼(a+b,a+b)∼(0,0)
なので、逆元 −(a,b) は (b,a) で定義すればよいのです.
このような新しいイコール(この場合 ∼ )を入れる操作も同値類 といいます.
N ×N に新しいイコール ∼ を導入したものと Z は数として全く同じものです.(このことも同型 と言ったりします.)
こうして、2つの自然数から整数と同じものが構成できました.
この操作を実体化すると、
のような絵になる.(正確な絵でないので等間隔になっていませんが...)
この赤い部分を1点ととする、もしくは斜め45度傾けてみてみると、赤い線が整数個並んでいることが分かるはずです.
[課題8-3の出題に関して科学的な見地から]
解答はいろいろとありましたが、意味があるかどうかわからない問題でも真剣に取り組んで
何か意味を見出そうとするということは科学者としてだけではなく人としてはよくあることです.
何か面白い言い訳を思いつくようなものかもしれません.
非科学者としては(いわゆる)誤魔化しやレトリックといったものも含まれる場合があります.
しかし、科学者の姿勢は、どこが不明瞭なのか?どの対象が未定義なのかをよく考えることで正当化していくことに
あります.
科学者的な立場を貫き通せば、比較的人からだまされにくくなるでしょう.
レポートの採点は一科学者の視点からのコメントです.
良いと思われるものに関しては授業全体の評価にプラスアルファされます.
第8回(2/20)
表現行列 プリント (課題〆切2/27の授業まで)
内容
表現行列(準備)
表現行列とは、ベクトル空間 VとW の間の線形写像を行列で表現することです.
数ベクトル空間の間の線形写像は行列 A の左からの掛け算で書けます.(x→Ax のように.)
このように任意のベクトル空間の間の線形写像をベクトルの左からの掛け算として考えたい.
しかし、ベクトル空間に行列を左から書けるということは決まった方法はありません.
そのために、 V と W の間に基底を用意する必要があります.
表現行列(基底を取って行列で表現しよう.)(t は行列やベクトルの転置で、左上に置くとする.)
V と W の基底をそれぞれ v1 ,v2 ,...,vn-1 ,vn と w1 ,w2 ,...,wm-1 ,wm とします.
(任意の V の元は c1 v1 +c2 v2 +...+cn-1 vn-1 +cn vn と表されますがこれを数ベクトル空間((c1 ,c2 ,...,cn-1 ,cn ) と同一視したいのです.)
数ベクトル空間における上の A の i 番目の縦ベクトルは基本ベクトル ei の像ですから、
ベクトル空間の場合の表現行列も i 番目の基底の行先を決めてやればよいのです.つまり、f(vi ) 求める.
f(vi )=a1i w1 +a2i w2 +...+a(m-1)i wm-1 +ami wm と書けます.
つまり、 f(vi )=(w1 ,w2 ,...,wm-1 ,wm )t (a1i ,a2i ,...,a(m-1)i ,ami ) が成り立つ.
A=(aij ) (m×n行列)と置けば、
f(v1 ,v2 ,...,vn-1 ,vn )=(f(v1 ),f(v2 ),...,f(vn-1 ),f(vn ))=(w1 ,w2 ,...,wm-1 ,wm )A とかけることになります.
この A が表現行列です.
上の同一視が成り立っているか確かめてみます。
v=c1 v1 +c2 v2 +...+cn-1 vn-1 +cn vn とします.
f(v)=f(c1 v1 +c2 v2 +...+cn-1 vn-1 +cn vn )=c1 f(v1 )+c2 f(v2 )+...+cn-1 f(vn-1 )+cn f(vn )
=(f(v1 ),f(v2 ),...,f(vn-1 ),f(vn ))t (c1 ,c2 ,...,cn-1 ,cn )=(w1 ,w2 ,...,wm-1 ,wm )At (c1 ,c2 ,...,cn-1 ,cn )
ゆえに、これらの基底に関して、同一視を使えば、
(c1 ,c2 ,...,cn-1 ,cn ) が At (c1 ,c2 ,...,cn-1 ,cn ) に写されたことになります.
第7回(2/13)
線形写像の作り方、基底の延長の仕方 プリント (課題〆切2/20の授業まで)
内容
線形写像の作り方
ベクトル空間 V,W の間の線形写像 f を作るにはどうしたらよいのでしょうか?
まず、線形写像である前に、写像でないといけません.
写像については下の文章 を読んでください.
ですから原理的にはあらゆるベクトル v の元に対してあるベクトル w∈W を対応させることになります.
しかしここで作りたいのは線形写像ですから特別な性質を満たします.(以下参照)
実は基底 v1 , v2 ,..., vn の行先を決めれば線形写像は一意に決まります.
というのも、もし基底の行先を決めると、
任意の v∈V は v=c1 v1 +c2 v2 +...+cn vn と一意的に書けます.
f(v)=f(c1 v1 +c2 v2 +...+cn vn )=c1 f(v1 )+c2 f(v2 )+...+cn f(vn )
vi の行先 f(vi ) は既に決まっているので、 右辺の値はそれから計算できるので f(v) の値も自動的に決まることになります.
だから、基底の行先さえ決まれば f は自動的に決まります.
基底の延長
ベクトル空間 V の基底を特定の v1 ,v2 ,...,vm を含むようにするにはどうしたらよいでしょうか?
が基底の延長の問題です.
V を簡単のために数ベクトル空間とする.
v1 ,v2 ,...,vm を1次独立なベクトルとする.
そして、行列 (v1 v2 ...vm ) を基本ベクトルを延長して、 A=(v1 v2 ...vm e1 e2 ...en ) とする.
この行列は (n×(n+m))行列 A の rank は n であり、最初の m 列は、1次独立であるから、
A の(行における)簡約化は B=(e1 e2 ...em ...) となるはずである.
この B の列ベクトル中から他の基本ベクトル em+1 ,em+2 ,...,en が必ず存在する.
この列ベクトルに対応する A の列ベクトル ei1 ,ei2 ...ein-m (A の後半部分のどこかとなる)を選ぶ.
よって、{v1 ,v2 ,...,vm ,ei1 ,ei2 ,...,ein-m }が V の基底となる.
写像について
写像とは以下の性質を満たすものです.とりあえず、V, W は線形構造を忘れて単なる集合と考えます.
集合 V の任意の元 v に対して、ただ一つ W の元 w を対応させる規則のこと.
ここで大事なことが2つあって、上でオレンジ色で強調しました.
つまり、 V の任意の元に対して対応があること.また、v に対してただ一つに W の元がきまること.
です.
ですから、 V の元に対応がないものがあっても写像ではないし、W の元が1つに決まらなくても写像ではありません
v 1 ,v 2 ,...,v m が基底でないと f は一意的に決まらない.というのは
以下のことがあるからです.
基底でなければ v に対して v 1 ,v 2 ,...,v m の線形結合の書き方が2通り以上ある場合があります.
つまり、c1 v 1 +c2 v 2 +...+cn v n =c1 'v 1 +c2 'v 2 +...+cn 'v n と書けたとすると、
c1 f(v 1 )+c2 f(v 2 )+...+cn f(v n )と
c1 'f(v 1 )+c2 'f(v 2 )+...+cn 'f(v n )が
値が違うかもしれません.
第6回(2/6)
部分ベクトル空間の次元の和の公式、線形写像、0次元ベクトル空間 プリント (課題〆切2/13の授業まで)
内容
V1 +V2 の次元を与える公式.
dim(V1 +V2 )=dim(V1 )+dim(V2 )−dim(V1 ∩V2 )
線形写像 f : V→W
V, W をベクトル空間とすると、その間の写像 f が線形写像であるとは任意の V の元 x,y と任意の K の元 λ に対して次の条件を満たすことである.
f(x+y)=f(x)+f(y) f(λx)=λf(x)
線形写像とは、V と W の線形構造(ベクトル空間としての構造)が対応するように写す写像のことである.
線形写像のもつイメージは授業時間内に大体分かったと思いますが、真っ直ぐなものは真っ直ぐに写す .原点を原点に写す .
原点周りの回転などは線形写像の典型です.また
ベクトル空間は数ベクトル空間がモデルですから、ベクトルに対する行列の掛け算として考えてよいでしょう.
ベクトル空間 {0}
{0} は 0 しかない集合ですが、ベクトル空間の定義を満たすので、ベクトル空間です.
空集合と間違えないでください.
次元は今日、計算してくれた人がいましたが、0 次元です.
この集合の中から、1次独立なベクトルは取れません.
基底の集合は空集合Φです
固有値、固有ベクトルに関して
2学期の復習ですが、固有値に対してその固有ベクトルは性質上零ベクトルにはなりえません.
固有ベクトルを求めようとして、キチンと計算をしないと(例えば、符合をミスったり、簡約化の計算ミスをしたりすると)大体は零ベクトルになってしまうことが多いです.なので固有ベクトルを計算してちゃんと零ベクトルが出てくれば自分の計算は合っていると思ってもよいでしょう.
零になってしまったらどこかで必ず計算ミスをしています.(分かりやすいですね.)(これの文章がどういう意味か分からない人は質問、メールなどしてください.)
課題4-3(1)の解答
今日返却した課題4-3(1)はできている人は一人かしかいませんでした.ここで答えを書いておきます.ほとんどの人は意味不明の解答でした.
A は n×n 行列で、(さらに対角行列)C [A]とは
{a0 E+a1 A+...+am Am |ai ∈ C }
となる集合です.ここで m は与えられた数ではなく、任意の数です.つまりなんでもいい. つまり A を変数とした多項式と思っているわけです.
示すべきことは C [A] が n 次元以下であることです.仮定として A が対角行列ですが (1) の解答のためにはそれは使いません.
パラメータが a0 ,a1 ,...am といくらでもあるのに何故か n 次元以下で抑えられてしまいます.
普通多項式は次元は無限次元です.1, X, X2 , X3 ,....とどれだけあっても次数の高い多項式を有限個の Xi だけでは捉えきれません.
なのに有限の n で抑えられるというわけです.
その秘密はケイリーハミルトンです.
n×n行列 A はある係数 ai ∈C に対して
An +an-1 An-1 +...+a1 A+an E=O
という関係式があります.
この場合(C [A] においては)、1次関係式です.
もちろん、これに A を両辺に掛けた
An+1 +an-1 An +...+a1 A2 +an A=O
も成り立ちます.
ベクトル空間としては、n 以上の m に対して、 Am はそれ以下の次数の Am-1 ,Am-2 ... の1次結合で書けることが分かります.
よって、このことから、 Am を置き換えて、C [A] の
全て n 以上の指数をもつ A のべきの項を小さくすることができます.
結局 C [A] の任意の元は E, A, A2 ,..., An-1 の1次結合でかけることになります.
つまり、
<E,A,A2 ,....,An-1 >
ということになります.左辺は次元は n 以下ですので、求める不等式が成り立つことになります.
第5回(1/30)
ベクトル空間の直和 プリント (課題〆切2/6の授業まで)
問題5-2(1)はあるs,tで満たさないことを示すだけでよいです.任意のs,tでならないことを示さなくてもよい.
問題5-2(2)HINT訂正("任意の2つの固有空間"を削除)
内容
ベクトル空間の直和.
まず、ベクトル空間の和 V1 +V2 とは、V1 , V2 がベクトル空間 V の部分ベクトル空間であって、{v1 +v2 ∈ V|vi ∈Vi } となっていることである.
生成系の言葉で書けば、V1 , V2 がそれぞれ、<v1 ,v1 ,..,vn >, <w1 ,w1 ,..,wm > となるとき、V1 +V2 =<v1 ,v2 ,..,vn ,w1 ,w2 ,..,wm > となる.
ベクトル空間の直和とはさらに、V1 と V2 をとったときに重複しないということである.
つまり、V1 ∩ V2 ={0 } が条件に入る.
このように書いたとき、 V1 +V2 の元を v1 +v2 と書く書き方に重複はなくなる.
つまり、v∈V1 +V2 を和で書いたとき、v=v1 +v2 =w1 +w2 と2通りの書き方はなくなる.
V1 +V2 が直和であるための定義は、このような2通りの書き方がない、もしくは、
V1 ∩V2 ={0 } である.
V∩W を求めること
数ベクトル空間の場合は、V={v∈Cn |Av=0}, W={v∈Cn |Bv=0} であるとき、V∩W={v∈Cn |Av=0,Bv=0}={v∈Cn |Cv=0} となります.ここで、C は A と B を縦に重ねた行列.
V=<v1 ,v1 ,..,vn > と W=<w1 ,w1 ,..,wm > において V∩W を求めることは少し大変ですね.
1-4(1)では V∩W が部分ベクトル空間であることを問題にしています.(授業中では問題がないと言っていましたが、
1回の授業で登場していました.)
v1 ,v2 ,..,vn が1次独立で、v,v1 ,v2 ,..,vn
が1次従属であれば、v は v1 ,v2 ,..,vn の1次結合でかける.(証明は授業中にしたとおり.)
ベクトル空間 {0 }≠V=<v 1 ,v 1 ,..,v n > において、この中からいくつかベクトルを選べば、それを V の基底にすることができる.
つまり、V=<v n1 ,v n2 ,..,v nk >
(1≤ni ≤n) であり、{v n1 ,v n2 ,..,v nk } は
1次独立.
先週の問題は固有値を求めるところで大変な数になってしまったようですね。
本当は固有値が整数になる予定でしたが、数値を入れ間違えてしまったようです。
それも2問とも。とほほ。すいませんでした。
第4回(1/23)
部分ベクトル空間、次元 プリント (課題〆切1/30の授業まで)
プリントのミスプリ直してあります。(課題4-3:...出かける行列全体をの-> で書ける行列全体の集合を)
内容
部分ベクトル空間であること.
ベクトル空間であることを示す方法は下で示した通り.
では、部分ベクトル空間であることを示す方法は?
Vがベクトル空間であることが分かっているとして、 W⊂ V がその部分ベクトル空間であることは次を満たすことである.
W は空集合ではない.
x ,y が W の任意のベクトルであるとして、
x+y ∈ W を満たすこと.
λ を任意のスカラーであるとして、
λ x∈ W を満たすこと.
この加法やスカラー倍は V の加法とスカラー倍と同じものです.
つまりこの操作が V のものから W の中に誘導されるかということです.
加法とスカラー倍が W の中で閉じているということもできます.
ベクトル空間であるための証明より大分手間がかかりません.
(3条件だけ.ベクトル空間であるためには加法とスカラーを定義して、8個の条件を満たさなければならなかった.)
部分ベクトル空間のイメージ
部分ベクトル空間は、抽象ベクトル空間の例です.
部分ベクトル空間 W はベクトル空間 V の中で、真っ直ぐな、平らな空間 のイメージです.
さらに、部分ベクトル空間はベクトル空間 V の原点を通るような 空間でなければ
なりません.
これは重要な性質です.
部分ベクトル空間の例
演習の講義のときにもやりましたが、典型的な例は数ベクトル空間の中で、連立1次方程式 Ax =0 で定められるものです.これを解空間 といいます.
この右辺が0 であることがポイントで、これが 0 でないと、解空間は平らな空間ですが
原点を通らないので部分ベクトル空間になりません.
これは演習でやりましたね.
もうひとつ例は行列の固有空間です.固有空間とは、λ を行列 A の固有値とすると、(λ E-A)x =0 で定義されますから解空間の一種です.
よって部分ベクトル空間となります.
ベクトル空間の次元について
まず、ベクトル空間の次元 はそのベクトル空間に含まれる基底 の数として定義します.
ベクトル空間の次元はベクトル空間固有のものであって、次元を計算するために選ぶ基底のとり方に因りません.
ベクトル空間の基底は無数にとり方があります.
また、できるだけ沢山、1次独立なベクトルをとったとき、それらは基底となります、またそのような数はいつも決まっており次元の分だけあると言ってもいいです.
このようなことを数学や物理では極大性 といいます.
なので、次元が n のベクトル空間の中で、n+1 個のどんなベクトルをとっても1次独立にはなりません.
正方行列 A の固有値 λ とは、|λ E-A|=0 を満たす複素数のことで、
固有値は、ある零でないあるベクトル x に対して、 Ax =λx を満たします.
このベクトルの方向では、行列は定数倍として作用するということを意味しています.
ΦA (x)=|x E-A| を固有多項式といいます.
固有値 λ に対する固有空間とはこのような固有値に対して、 Ax =λx 全体の集合を指し、
数ベクトル空間の部分ベクトル空間になっています.
固有値を求めたり、固有空間を調べることで、行列 A の性質が分かってきます.
固有値は、A をある正則行列 P を使って P-1 AP に変えて行っても固有多項式(もちろん固有値も)やその
固有空間の様子は変わりません.特に固有空間の次元は一致します.
ΦA (x)=ΦP-1 AP (x)
抽象ベクトル空間と数ベクトル空間の違い.
数ベクトル空間を抽象化するとどうなるのか.
抽象ベクトル空間は、次元 n であれば、n 次元数ベクトル空間と同型写像を作ることができます.
つまりそれらはベクトル空間として全く同じものです.では抽象ベクトル空間が数ベクトル空間とどこが違うのかというと、
標準的な基底がない ことです.
数ベクトル空間 C n には {t (0,...,0,1,0,...0)} という標準的な基底があります.
(つまり、成分のどこかが 1 でそれ以外は 0 の n 個のベクトル.)
しかし抽象ベクトル空間にはこのような決まった基底がありません.
例えば、連立1次方程式 Ax =0 を解いたとき、その解 v はパラメータ c1 ,c2 ,...,ck と
ベクトル v 1 , v 2 ,...,v k を使って、
v =c1 v 1 +c2 v 2 +...+ck v k
のように書けます.
つまり、解空間は部分ベクトル空間<v 1 , v 2 ,...,v k > となります.
しかし、vi は一般のベクトル(上のような標準的なベクトルではない)であり、そのとり方は解き方によって違ってきたりします.
第3回(1/9)
ベクトル空間、基底 プリント
(NEW!! ) 第3回のプリントのヒント集
内容
抽象ベクトル空間
加法とスカラー倍が定義されている.
その演算が下の[ベクトル空間の性質](8個)を満たす.
行に関する基本変形
A=(a 1 ...a n ) の行の基本変形の結果を B=(b 1 ...b n ) とする.
このとき、x1 a 1 +...+xn a n =0 であることと
x1 b 1 +...+xn b n =0 であることは同値である.
行変形をしてもベクトルの1次関係は変わらない.
つまり、同じ係数の1次結合が0-ベクトルになるかどうかを保ったまま変形される.
特に1次独立であることは完全に保ったまま変形する.
簡約化をしてしまえばどのベクトルが1次独立であるか、1次従属であるか完全に分かる.
基底
v1 ,...,vn が基底であるとは次の2つを満たすこと.
v1 ,...,vn が1次独立であること.(1次独立性) <v1 ,...,vn >=V (生成性)
基底とはベクトルの元を過不足なく書き下すベクトルの集合である.
V=<v 1 ,...,v n > とする.
{v 1 ,...,v n }のうちで、最大個数の1次独立なベクトルを
v i1 ,...,v ik とすると、v i1 ,...,v ik
は V は基底をなす.
問題は基底の性質の2つ目だが、v =a1 v 1 +...+an v n =a'1 v i1 +...+a'k v ik
となることを示せばよい.
そのためには任意の v j が v i1 ,...,v ik
の1次結合で書ければよい.
v j が v i1 ,...,v ik に入っていれば問題ない.
入っていないときも
v j =c1 v i1 +...+ck v ik
と書けるだろうか?
実は、{v j ,v i1 ,...,v ik } は1次従属である.
よって係数c1 ,...,ck の存在がいえる.(←証明せよ.よくある議論.)
第2回(12/19)
数ベクトル空間 プリント
内容
線形写像 f: Kn →Km とする.
部分空間 Im(f) について.
Im(f)=<f(e1 ),f(e2 ),...,f(en )>
ただし、e1 ,e2 ,...,en は数ベクトル空間の標準基底.
<a1 ,...,am-1 >=<a1 ,...,am > が成り立つとき、am はa1 , a2 ,...,am-1 の一次結合で書けること.
<a1 ,...,am-1 >≠<a1 ,...,am > かつ
a1 ,...,am-1 が一次独立ならば a1 ,...,am も一次独立であること.
一次独立なベクトルの最大個数(a1 ,...,an , b1 ,...,bn をベクトル、c1 ,...,cn をスカラーとする.)
c1 a1 +c2 a2 +...+cn an =0 を a1 ,...,an の間の一次関係という.
a1 ,...,an の間の一次関係は、A=(a1 ...an ) を行 の基本変形をしても変わらない.
つまり、A の基本変形 A'=(b1 ...bn ) に対して、b1 ,...,bn が満たす一次関係
c1 b1 +...+cn bn =0 は同じ係数 c1 ,...,cn で
c1 a1 +...+cn an =0 を満たす.
a1 ,...,an の中から最大数の一次独立なベクトルを選び出すには、
まず、
A=(a1 ...an ) に行 の簡約化して、B を作る.
B=(b1 ...bn ) の中から標準(縦)ベクトルを"全て"選び出す.(1つの成分(その成分は1)以外0である縦ベクトル.)
選んだベクトルと同じ位置にある A の縦ベクトルが a1 ,...,an の中で一次独立なベクトルの
最大になる.(理由は問題2-1より.)
(縦)ベクトルに行列 A を左から書けることで得られる写像 f は線形写像です (x→ Ax のように).
A=(a1 ...an )とします.
Ker(f) を求めることは Ax=0 という連立一次方程式を求めることと同じです.
よって、A=(a1 ...an )を行 だけの基本変形を用いて簡約化をすること
によって方程式を簡単にし、連立方程式の解集合( Ker(f) )を求めることができます.
Im(f) は 、Im(f)=<a1 ,...,an > ですが、
A の列の基本変形をした行列を B=(b1 ...bn ) としても、Im(f)=<b1 ,...,bn >
となります.
よって、列 の基本変形だけを使って簡約化することで、Im(f) の中から一次独立なベクトルを求めることができます.
a1 ,...,an の間の非自明な一次関係とは、(0,0,..,0) でない係数 (c1 ,c2 ,...,cn ) を使って
c1 a1 +c2 a2 +...+cn an =0 が成り立つことである.
集合V がベクトル空間であることの証明について。(K をスカラーとなる体とする.)
V にベクトルの足し算、とスカラー倍を定義する。
つまり、任意の v , w ∈ V に対して、v +w ∈ V, 任意の k ∈ K と v ∈V に対して、 kv ∈ V となる演算を定義する.
[ベクトル空間の性質]次にそれらの演算が次の性質を満たすことを示す.
u,v,w,0 ∈ V, 1,a,b ∈ K
(u +v )+w =u +(v +w )
u +v =v +u
v +0 =v
v ∈ Vに対して-v ∈Vが存在して、v +(-v )=0
a(u +v )=au +av
(a+b)u =au +bu
a(bu )=(ab)u
1v =v
ここで、1 は K の単位元.
課題2-3では Hom(K2 ,K) 上ベクトル空間の構造をどのように入れるかがまず問題である.
第1回(12/5)
2学期までの復習、線形性 プリント
内容
連立1次方程式.
連立一次方程式をキチンと求めることは線形代数IIIを制す.
特に自由度がある場合(一通りに決まらないとき)の解法が重要です.
出てくるパラメータの数が重要でそれをどのように数えるのか?が問題です.
連立方程式から決まる係数行列を簡約化する(基本変形する)ことでどんな場合も曖昧さなく解きましょう.
方法は授業で教えた通りですが、教科書にも説明があります.
線形性.
線形性のための性質は2つあります.
x,y を任意の2つのベクトルとし、k を任意のスカラー(複素数もしくは実数)とする.2つの条件は以下.
f(x+y)=f(x)+f(y)
f(kx)=kf(x)
注意すべき点は全ての x,y,k ということ、
満たさない x,y,k の組があれば即刻線形ではなくなります.
行列を簡約化する形で解く方法は少なくとも受講者全員!!は必ずマスターしておくこと.
3学期の最重要課題.
課題にある、像と核を求めよという問題は、像と核となる数ベクトル空間の集合を連立方程式を解く形にもっていくということです。
つまり、
x0 +c1 x1 +c2 x2 +....+cm xm
の形にしてください.
ここで、xi はベクトルを表し、ci は任意のスカラー(つまりKの元)を渡る.
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