数学基礎 2011年度後期
火曜日2,3限
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第1回(10/4)
多変数関数の連続。偏微分。全微分の定義
内容:
- 多変数関数の連続の定義(イプシロンデルタ論法による。)
- 連続でない多変数関数の例1。
- 点列連続。
- R^nでは点列連続であることと連続であることは同値である。
- 連続である関数の例とその証明法。
- 偏微分可能の定義。
- 偏微分可能だが連続でない例2。
- 全微分可能の定義。
次は同値である。
- 全微分可能であること
- 1次近似ができること
- 接平面が取れること
- 全微分可能なら連続であること。
- 全微分可能ならば偏微分可能であること。
第2回(10/11)
全微分可能であるための十分条件。
合成関数の微分法。
内容:
- 全微分の右辺の係数はfの偏微分係数であること。
- 全微分可能であるための十分条件。
偏導関数が(すべて)連続であればその多変数関数は全微分可能である。
- 接平面の定義。
- 勾配ベクトル(gradient) grad(f) の定義とその意味。
- grad(f) は f がもっとも増加する向きの接平面方向を表す。
- 合成関数の微分法①
F(t)=f(Φ(t),Ψ(t))と置くと、
dF/dt=fx1Φ'(t)+fx2Ψ'(t)=grad(f(t)・(Φ'(t),Ψ'(t))
である。
- 合成関数の微分法②
F(u,v)=f(Φ(u,v),Ψ(u,v))と置くと、
grad(F)=J・grad(f)
- J はヤコビ行列。
- J の行列式はヤコビアン
第3回(10/18)
微分の順序、多変数のテイラー展開、多変数の極値問題
内容:
- 微分の順序について。
- fxy と fyx が両方連続ならばfxy=fyx であること
- Cn 級関数の定義
- 極大(小)値の定義。
- 1変数テイラー展開の復習
- 多変数テイラー展開の定理とその証明。
- 2変数関数が極値を持つための十分条件。
- fx(a,b)=fy(a,b)=0 となる (a,b) において、
- fxx(a,b)>0 かつ fxx(a,b)fyy(a,b)-fxy(a,b)2>0 ならば (a,b) で極小値をもち、
- fxx(a,b)<0 かつ fxx(a,b)fyy(a,b)-fxy(a,b)2>0 ならば (a,b) で極大値をもつ。
- を (a,b) でのヘッセ行列という
- H の行列式をヘッシアンという。
- 2変数関数の極値を見つけるための演習。
第4回(10/25)
ベクトル空間、線形写像
内容:
- ベクトル空間の定義。
- 数ベクトル空間はベクトル空間の例である。
- 多項式全体の集合がベクトル空間になること。
- 部分ベクトル空間の定義
- いくつかのベクトルで張られる空間は元のベクトル空間の部分ベクトル空間になる。
- 連立一次方程式の解空間は数ベクトル空間内の部分ベクトル空間になること。
- 一次独立
- 一次従属
- 一次関係
- 基底
- 線型写像の定義
- ベクトル空間の線形写像の例
- 核(Kernel)と像(Image)は部分ベクトル空間である。
答え
提出期限11/11
第5回(11/1)
解空間の次元
内容:
- 基底の濃度は基底の取り方によらないこと。
- 証明。
- 証明の途中で m< n のときに、M(m,n,K) の行列が作る連立一次方程式 Ax=0 は自明でない解 (xが0ベクトルでない解)を必ず含むことを使う。
- ベクトル空間の基底の濃度をベクトル空間の次元と定義する。
- 数ベクトル空間 Kn の次元は n であること。
- 解空間 W の次元が dim(W)=n-rank(K) であること
- 例題を用いて連立方程式を解いてみる。
- その例題の答えの表示のときに自然と解空間の基底を用いていることを指摘。
- その基底の数は簡約化に現われる主成分以外のものから得られている。
- つまり、解空間の次元はベクトル空間の次元から主成分の数(rank(A))を引いた数になる。
- 演習。
第6回(11/15)
一次独立なベクトルの最大数
内容:
- 一般のベクトル空間の場合に、線形写像の Kernel の次元を求める公式も同じであることを証明。
- T:U -> V を線形写像とし、dim(U)=nとすると、n=null(T)+rank(T) がなりたつこと。
- ベクトル空間のある有限個のベクトルの集合の1次独立なベクトルの最大個数の定義。
- それを I(v1,v2, ..., vn) と書く。
- I(v1,v2, ..., vn) は < v1,v2, ..., vn> の次元であること。
- ベクトルの集合 {v1,v2, ..., vn} が {u1,u2, ..., um} の1次結合で書くことができれば、
I(v1,v2, ..., vn)≦I(u1,u2, ..., um)
が成り立つ。
- I(u1,u2, ..., um)=r であることは、次と同値。
{u1,u2, ..., um} の中に r 個の1次独立なベクトルがあり、その他の m-r 個の
ベクトルはその r 個の1次独立なベクトルで書きあらわすことができる。
- 数ベクトル空間の場合の例題。
- ベクトルを縦ベクトルにする行列 A を簡約化して B が得られたとする。
- このとき、 A から作られる1次関係式 Ax=0 は、 B が作る1次関係式 Bx=0 を導く。
- この逆も成り立つ。つまり A から作られる1次関係式と B から作られる1次関係式は同値である。
- Bx=0 から作られる関係式から1次独立なベクトル(主成分を含むものを取ればよい)を選ぶことは容易である。
- またそれ以外のベクトルがその1次独立なベクトルの1次結合であることも簡単にわかる.
- このような、1次独立性や関係式は A から作られる縦ベクトルにも波及する。
- よって元々のベクトルの1次独立なベクトルな最大個数は A のrankに等しい。
- 演習。
- 一般のベクトル空間の場合には、一次独立なベクトルを用意してやると数ベクトルの方法に帰着させることができることを証明。
第7回(11/22)
レポートの返却、線形写像に対するある行列表現。
内容:
- レポートで気になったところ。
- 1の b2-4ac=0 となる場合の議論をしている人が少なかった。
- 2の三角不等式で、間違って |A-B|≦|A|-|B| を利用している人がいた。
- 2の fx と fy の連続性を示すこと。
- Ker(T)=f(x) と書いている人がいた。正確には Ker(T)∋f(x)≠0
- 表現行列の定義。
- 数ベクトル空間の線形写像を基底を変えたときの表現の違い。
- 基底の変換行列。
- 基底の変換をしたときの表現行列の変化について
- 演習
第8回(11/29)
小行列式。小行列式が0でない最大次数(サイズ)の行列を求めること。固有値、固有ベクトル、固有多項式。
内容:
- 宿題の答え。
- (1)A が任意の行列であるとき、rank(A)=r であること.
(2)A の列ベクトルの1次独立な最大個数が r であること.
(3)A の行ベクトルの1次独立な最大個数が r であること.
は同値である.
- rank(A)=rank(tA)
- 小行列、小行列式の定義。
- rank(A)=r であることと A の小行列式が 0 でないものの最大次数が r であること.
- 小行列式が 0 でない最大次数の行列を求める方法とその演習.
- 固有値、固有ベクトル、固有多項式の定義.
第9回(12/6)
固有値、固有ベクトル、固有空間
内容:
- 固有空間を求めること
- 固有ベクトルを使って行列を対角化すること。
- 全ての行列が対角化できるわけではないこと。
- n 次の行列の固有空間の次元の和は n を超えないことの証明。
- 行列が対角化できるための必要十分条件は固有空間の次元の和が丁度 n であることの証明.
- 特に固有値が相異なる(n 次正方行列の固有値が丁度 n 個ある)とき対角化できることの証明.
- 行列が対角化できるかどうかの判定.(演習)
第10回(12/13)
最小多項式と対角化
内容:
- ケーリーハミルトンの定理とその証明。
- 正方行列 A が f(A)=O を満たす多項式の中で最小次数でかつ最高次の係数が1のものがただ1つあることの証明。
- それを行列 A の最小多項式という。
- 最小多項式の解の集合と固有多項式の解の集合は一致すること。
- 特に固有値は最小多項式の解になっていること。
- 例について.(の最小多項式との最小多項式を比べる。)
- 行列が対角化できることと最小多項式が重解をもたないことは同値であること.
- 行列 A と任意の正則行列 P に関して P-1AP の最小多項式は一致すること.
- 行列 A が対角化できるとき、固有値を解にもち、かつ固有値を重解にもたない多項式を f(x) とするとき f(A)=Oであること。
- 共通解を持たない n 個の多項式 m1(x),m2(x),...,mr(x) に対してある多項式g1(x)
, g2(x),..., gr(x) が存在して
m1(x)g1(x)+m2(x)g2(x)+...+mr(x)gr(x)=1
となること。
- 最小多項式が重解を持たないとき、任意の数ベクトル a が固有ベクトルの和でかけることをいう。
- 固有空間の基底を集めたものはもとの数ベクトル空間 Cnの基底になる。
- 前回の授業の事実を用いることで A は対角化可能。
- 最小多項式に関する演習
- 内積空間、内積の定義
- 数ベクトル空間内の標準内積
- 数ベクトル空間内の非標準内積の例
第11回(12/20)
シュミットの直交化
内容:
- 正規直交基底の定義
- シュミットの直交化とは与えられた1次独立なベクトルからある正規直交を満たすベクトルを
つくること
また、作った正規直交ベクトルが生成する部分空間は与えられたベクトルが作っていた部分空間と同じ。
- シュミットの直交化についての説明
- 例題、演習
- 直交変換の定義
- 直交変換を正規直交基底を用いて表現した行列は tAA=E を満たすこと。
- この条件を満たす行列を直交行列という。
- n 次直交行列の作る n 個の縦ベクトルは正規直交基底であること。
提出期限1/10
レポート答え
第12回(1/10)
対称行列の対角化
内容:
- 対称行列の固有値は全て実数であること。
- 固有値が実数の実正方行列は直交行列によって対角化されること。
- 実対称行列は直交行列によって対角化されること。
- 実対称行列の固有空間は互いに直交していること。
- 演習。
第13回(1/17)
演習
内容:
- レポートの解答解説
- 固有空間の次元は1以上、その固有値の重複度以下になります.
- つまり、対角化できるための必要十分条件は全ての固有値の固有空間の次元が重複度と一致することです.
- 演習.
演習問題
演習問題答え
(1/24)
試験延期
第14回(1/31)
定期試験
2限の試験で、問題2 (2)に問題訂正があり、
3限では訂正したものを試験問題として配布しました。
講評
- 問題1(1)(2)は意外とできている人は少なかった。
- 問題1(3)は方針があっていても途中計算を間違える人が多かった。
- 問題2(1),(2)正答率は高かった。解空間の求め方や次元公式を忘れているひとも少なからずいた。
- 問題3(1)はよくできていた。最小多項式を使って上手く解答しているひともいた。
- 問題3(2)は行列の簡約化を使わず、自力で解く人も見られた。
- 問題4は正答率はそれほど高くかなった。何を直交化すればよいのか分かっていない人もいた。時間が足りなかったのか対角化できることまで示しているひともいた。
- 問題5は定理や定義に当たるものが1つでも書かれている人を5点とし、用語だけの人は一律2点とした。
- 総じて、計算ミスはマイナス2点、重大な計算ミスはマイナス3から4。方針がだいたい合っているが議論が
途中までの人は半分もしくは1/3の点数をつけた。
☞全微分可能の判定条件(十分条件)の証明について
偏導関数 fx(x,y) と fy(x,y) が存在し、 かつ
連続であるなら、f(x,y) が全微分可能である。
- 平均値の定理を使って
が成り立つ。さらに
である。ここで、
を満たす。よって、
が成り立つ。
から、
が成り立つ。
よって f(x,y) は全微分可能
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