ハンドルセミナー'19 (since 2013)
場所:東京大学(駒場キャンパス)数理科学研究棟
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2019年後期
- 第9回1/16 (木)(158)
谷口 正樹氏 10:00-12:30
[タイトル]
2-knotのSeifert hypersurfaceとChern-Simons汎関数
[アブストラクト]
2-knot K(ここではC∞とします)を与える時, Kの結び目補空
間の基本群G(K)は, Kの最も基本的な不変量のひとつです. G(K)を幾何的に表現
するひとつの方法として, Lie群Gを固定した時, 表現の同型類の空間 R(K, G)が
あります. この講演では, “oriented 2-knotに対するChern-Simons汎関数”csK :
R(K, SU(2)) → (0,1] を導入し, その性質をYang-Millsゲージ理論を用いて調
べていきます. まず, csK について次の5つの基本的な特徴があります.
1. Im csKは, 有限集合となり, さらに2-knotのisotopy不変量となります.
2. 『穴を開けた有向閉3次元多様体YからS4への埋め込みを与えるとき, その
境界として定まる2-knot KのChern-Simons汎関数の像 Im csK は, YのChern-
Simons汎関数の像(臨界値) Im csY に含まれる』という性質があります. Yのこ
とをKのSeifert hypersurfaceと呼びます.
3. Im csK ∩ (0,1)が空でなければ, その個数の2倍分, knot補空間の基本群の
既約なSU(2)表現(同型を除いて)が存在します.
4. ribbon 2-knotに対しては, Im csK = {1}となります.
5. 連結和公式, 結ぶ目の向きを逆にした時の公式があります.
また, Im csKについて, twisted spun knotという2-knotのクラスについて, い
くつかの計算を行いました. Torus knot, Montesinos knotのtwisted spun knot
の場合には, Im csKは, 手で計算できます. 主定理は, 『2-knot Kに対して,
csKを通して, (あるクラスの3次元多様体がSeifert hypersurfaceとして存在す
ること)と, (結び目補空間のSU(2)既約表現の存在)を結びつける』 というもの
です. 例えば, -Σ(2,3,6k-1)をSeifert hypersurfaceとして持つ2-knot Kに対し
て G(K)は既約なSU(2)表現を持つ, ということが示せます. (これは, Im csKが,
1/24(6k-1) を含む, という定理の系として示されます) Freedmanの結果により,
-Σ(2,3,6k-1)は, TOPの圏では閉多様体のまま, locally flatにS4に埋め込ま
れることが知られています. これにより, TOPの圏では, -Σ(2,3,6k-1)はunknot
のSeifert hypersurfaceとなります. すなわち, TOPの圏でこの主定理は偽であ
り, 2-knotの滑らかな構造を反映した繊細な定理であることがわかります. 主定
理の証明は, 『フィルター付されたインスタントンFloerホモロジーにおける
Lefschetzの不動点定理の類似』 を示すことによって行われます. この講演では,
csKの紹介, その応用に着目し, 話をさせていただきたいと思います. (今回
の講演の主な内容は, プレプリント, arXiv:1910.02234 に含まれています)
- 第8回11/26 (火)(370)
福田 瑞季氏 10:00-12:30
[タイトル]
Branched twist spin の構成と有限表示群への表現について
[アブストラクト]
Branched twist spin とは4次元球面内に滑らかに埋め込まれた2次元球面であり、歴史的には、Paoによって、局所滑らかで効果的な S1 作用を用いて定義された。知られている性質として、この結び目はほとんどがファイバーであり、そのファイバーは古典的結び目に沿った3次元球面の分岐被覆であることが挙げられる。また、結び目群には非自明な中心が存在する。今回の講演では Pao による作用の具体的な構成方法を説明し、古典的結び目の Wirtinger 表示を用いた branched twist spun の結び目群の表示を用いて、有限表示群への表現を考察して得られた結果と、そのアプローチについて紹介する。
2019年前期
- 第7回9/25 (水)(156)
飯田 暢生氏 10:00-12:30
[タイトル]
境界にコンタクト構造を持つ4次元多様体に対するBauer-Furuta型不変量
[アブストラクト]
閉4次元多様体に対するSeiberg-Witten不変量から派生した不変量として、次の2つがある。 1つ目は、BauerとFurutaにより有限次元近似という手法によって構成された、Bauer-Furuta安定ホモトピー不変量とよばれる、閉4次元多様体に対するSeiberg-Witten不変量の精密化である。 2つ目はKronheimer-Mrowkaが構成したSeiberg-Witten不変量の変種で、閉4次元多様体ではなく、境界にコンタクト構造を持つ4次元多様体に対して定義されるものである。 この不変量は、境界にコンタクト構造を持つ4次元多様体に、概Kähler構造を持つコーン状に広がる端を境界で接着してできる非コンパクトな多様体上で、Seiberg-Witten方程式の解のゲージ同値類の個数の数え上げを行うことにより構成される。 講演者は有限次元近似により、このKronheimer-Mrowkaによる不変量のBauer-Furuta型の精密化を構成した。 今回の講演では、その構成および性質について説明する。
浅野 喜敬氏 14:15-16:45
[タイトル]
Vertical 3-manifolds in simplified genus 2 trisection of 4-manifolds
[アブストラクト]
閉4次元多様体のtrisectionとは4次元の1-ハンドル体3つの組による,閉4次元多様体の分割である.Gay-Kirbyは,閉4次元多様体からR2への安定写像 (trisection map) を構成することで,任意の閉4次元多様体がtrisectionを許容することを証明した.Simplified trisectionはtrisection mapのうち,特異値が単純なものであり,Baykur-Saekiにより任意の閉4次元多様体に存在することが証明されている.
本講演では,以下の講演者による2つの結果を紹介する.
1.simplified (2, 0)-trisection mapによる弧の逆像として現れる閉 3 次元部分多様体(vertical 3-manifoldsと呼ぶ)を決定した.
2.simplified (2, 0)-trisection mapの値域の中の,特別な3つの弧の定めるvertical manifoldの組のリストを作成した.また,リストの各元と定義域多様体の対応を与えた.
- 第6回8/26 (月)(306)
増田 宙斗氏 10:00-12:30
[タイトル]
エキゾチックR4の写像類群について
[アブストラクト]
GompfによるエキゾチックR4の写像類群に関する結果を紹介する.特に非可算無限の写像類群を持つエキゾチックR4の構成を解説する.この写像類群はQの可算無限の直積や,可算無限のランクの自由群などを部分群として含む複雑な群になっている.エキゾチックR4の写像類群に関する結果は今までになく,さらにこの結果はコルクの理論(特にAuckly-Kim-Melvin-RubermanによるG-コルクの構成)と関係を持っていることからも非常に興味深い.発表ではまずend sumを定義し,次にコルクとエキゾチックR4の関係について述べ,最後に定理のエキゾチックR4の構成を見る.時間があれば発表者の関連する結果についても解説する.
[参考文献]
Robert E. Gompf. Group actions, corks and exotic smoothings of R4. Invent. Math., 214(3):1131--1168, 2018.
- 第5回7/30 (火)(426)
直江 央寛氏 10:00-12:30
[タイトル]
Shadows of acyclic 4-manifolds with sphere boundary II
[アブストラクト]
4次元多様体のシャドウとは,大雑把に言えばその多様体の2-骨格として埋め込まれた2次元の多面体であり,4次元多様体や境界の3次元多様体のある種の組み合わせ的表示を与える.本講演では,境界が3次元球面であるような4次元ホモロジー球体が4次元球体と微分同相であるための十分条件をシャドウの見地から紹介する.さらに,connected shadow-complexity と呼ばれる4次元多様体の非負整数値不変量が2以下の場合には,常にこの十分条件が成り立つことが確認できたため,このことについても紹介したい.本研究は古宇田悠哉氏との共同研究である.
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第4回 7/9 (火)(156)
佐藤 光樹氏 10:00-12:30
[タイトル]
フィルター付きインスタントンFloerホモロジーとホモロジー同境群II
[アブストラクト]
- 第3回 6/26 (水)(156)
直江 央寛氏 13:30-15:30
[タイトル]
Shadows of acyclic 4-manifolds with sphere boundary
[アブストラクト]
4次元多様体のシャドウとは,大雑把に言えばその多様体の2-骨格として埋め込まれた2次元の多面体であり,4次元多様体や境界の3次元多様体のある種の組み合わせ的表示を与える.本講演では,境界が3次元球面であるような4次元ホモロジー球体が4次元球体と微分同相であるための十分条件をシャドウの見地から紹介する.さらに,connected shadow-complexity と呼ばれる4次元多様体の非負整数値不変量が2以下の場合には,常にこの十分条件が成り立つことが確認できたため,このことについても紹介したい.本研究は古宇田悠哉氏との共同研究である.
- 第2回 6/19 (水)(156)
佐藤 光樹氏 10:00-12:30
[タイトル]
フィルター付きインスタントンFloerホモロジーとホモロジー同境群
[アブストラクト]
Fintushel-Stern両氏と古田氏はorbifoldのゲージ理論を発展させることで、ブリーンスコーン3球面のある無限族がホモロジー同境群の元として線形独立であることを示した。本研究では、彼等の結果をフィルター付きインスタントンFloerホモロジーの言葉に翻訳することで、(負の無限大を含む)非正実数sでパラメータ付けされた実数値ホモロジー同境不変量の族{rs}を新たに導入する。本不変量の応用として、正定値または負定値交差形式をもつ4次元多様体を一つも張ることができないホモロジー3球面の無限族を与える。また別の応用として、1-手術のFroyshov不変量が負になる結び目について、全ての正の1/n-手術がホモロジー同境群の元として線型独立になることが示される。
本講演では、まず前半に本研究全体を概説する。また後半では、次の部分に焦点を当てて解説する: (1) r0の連結和公式 (線型独立性の証明に用いられる), (2) Daemi氏のホモロジー同境不変量との関係性 (ブリーンスコーン3球面のrsの計算に用いられる), (3) rsのトポロジーへの応用.
本研究は、野崎雄太氏、谷口正樹氏との共同研究である。
- 第1回 4/23 (火)(156)
Marco De Renzi氏 10:00-12:30
[タイトル]
Renormalized Hennings invarinats and TQFTs
[アブストラクト]
Non-semisimple constructions in quantum topology produce strong invariants and TQFTs with unprecedented properties. The first family of non-semisimple quantum invariants of 3-manifolds was defined by Hennings using certain algebraic ingredents called unimodular ribbon Hopf algebras. This enabled Lyubashenko to build mapping class group representations in the special case of factorizable ribbon Hopf algebras. Further attempts at extending these constructions to TQFTs only produced partial results, as the vanishing of Hennings invariants in many crucial situations made it impossible to treat the case of non-connected surfaces. We will show how to overcome these problems. In order to do so, we will first renormalize Hennings invariants through the use of modified traces. In the factorizable case, we will further show that the universal construction of Blanchet, Habegger, Masbaum, and Vogel produces a fully monoidal TQFT yielding mapping class group represen- tations in Lyubashenko’s spaces. We will also briefly discuss recent results relating these constructions to other non-semisimple quantum invariants and TQFTs. This is a joint work with Nathan Geer and Bertrand Patureau.
english version
< Keywords(今まで扱ったものを中心に)>
4-manifolds, Handle, Handle calculus, Kirby calculus, Exotic structure, Cork, Plug, Heegaard Floer homology, Seiberg-Witten invariant, Yang-Mills theory, Plane field, Contact structure,
Mapping class group, Lefschetz fibration, Fibered knot, Dehn surgery, Ribbon knots, Stein filling, Immersion, Branched cover, Mazur manifold, PALF, Curve graph, Whitehead double, Dehornoy ordering, Braid, Casson-Gordon invariant, Barking deformation, Dehn twist decomposition.shadow complexity, gleam, Upsilon invariant, Rasmussen invariant, non-proper stable map, equivariant cork, ribbon disk, Fox-Milnor theorem, trisection, 1-dimensional manifold
< 宛先 >
何か議論or話をしたい人がおられましたら、tange _at_ math.tsukuba.ac.jp まで連絡ください.
< 更新日時 >
Seminar