筑波大学微分幾何学セミナー

2024年度

11月15日(金) 15:15~16:30 (ハイブリッド)

場所: 自然系学系棟D棟8階D814セミナー室

山口 健太朗 氏(東京都立大学)

タイトル: アフィン部分空間から定まるシンプレクティックトーリック多様体の同変埋め込み

概要: コンパクトなシンプレクティックトーリック多様体は,トーラスのHamilton作用による運動量写像の像として定まるDelzant多面体とよばれる凸多面体によって完全に分類される.シンプレクティックトーリック多様体のトーリック因子の補空間と複素トーラスとの同一視のもとで,複素トーラスの中の複素部分トーラスをコンパクト化して複素部分多様体を得ることができる.本講演では,このようにして得られた複素部分多様体はシンプレクティックトーリック多様体のある部分トーラスのHamilton作用について同変であることを説明し,その複素部分多様体の運動量写像の像として定まる凸多面体に関する研究を紹介する.時間の許す限りSYZミラー対称性のもとで今回の複素部分多様体とLagrange部分多様体との対応関係についての考察にも触れたい.

10月7日(月) 15:15~16:30 (ハイブリッド)

場所: 自然系学系棟D棟8階D814セミナー室

馬場 蔵人 氏(東京理科大学)

タイトル: Atiyah-Hitchin多様体内の特殊Lagrange部分多様体の構成について

概要: Harvey-LawsonはCalabi-Yau多様体内の特殊Lagrange部分多様体の概念を導入した.特殊Lagrange部分多様体は数学だけでなく数理物理でも盛んに研究されている対象である.特殊Lagrange部分多様体の構成は一つの基本的な問題となりうるが,その一つのアプローチとしてモーメント写像を応用した構成法が知られている.本講演では,Atiyah-Hitchin多様体とよばれる4次元hyperkähler多様体内においてモーメント写像を応用した特殊Lagrange部分多様体の構成について説明する.本講演は,新井真人氏(山形大学)との共同研究に基づく(arXiv:2405.09036).

8月2日(金) 15:15~16:30 (ハイブリッド)

場所: 自然系学系棟D棟8階D814セミナー室

川上 裕 氏(金沢大学)

タイトル: Bloch-Ros principle and its application

概要: 複素解析学において,有理型関数の値分布論と正規族の理論との間には,Bloch principleと呼ばれるある種の双対性の存在が知られている. 講演者は笠尾俊輔氏との共同研究で,ZalcmanとRosの研究をもとに,この双対性を曲面のGauss写像の値分布論まで拡張した“Bloch-Ros principle”と呼ぶ理論を形成した. 本講演では,笠尾氏との共著論文(arXiv: 2402.12909)で記したこの理論の概要と今後の展望を話す.

7月26日(金) 15:15~16:30 (ハイブリッド)

場所: 自然系学系棟D棟8階D814セミナー室

中村 聡 氏(東京工業大学)

タイトル: Continuity method for Mabuchi's solitons on Fano manifolds admitting Calabi's extremal metrics

概要: Calabi's extremal metric is one of the most important generalization of a Kähler-Einstein metric for compact Kähler manifolds. Mabuchi's soliton introduced by Mabuchi is a generalization of a Kähler-Einstein metric for Fano manifolds, and it is studied extensively in recent years. It is known that a Fano manifold admitting a Mabuchi soliton also admits an extremal metric in the 1st Chern class. More recently, Apostolov-Lahdili-Nitta proved the converse under a sharp assumption. They used so-called YTD correspondence for Mabuchi solitons established by Han-Li, which rely on the minimal model program in birational geometry. In our talk, we give a new analytic proof of Apostlov-Lahdili-Nitta's result, which is based only on analysis for complex Monge-Ampere equation. Our crucial ingredient is to give a quantitative estimate of the modified Mabuchi functional, whose critical points are extremal metrics, along a continuity method for Mabuchi solitons.

2023年度

12月20日(水) 13:45~15:00 (ハイブリッド)

服部 広大 氏(慶應義塾大学)

タイトル: エネルギーを最小化する写像とcalibrated geometry

概要: リーマン多様体の部分多様体に対してその体積を対応させる汎関数の臨界点は極小部分多様体と呼ばれ,盛んに研究されている. 極小部分多様体は体積を最小化するとは限らないが,HarveyとLawsonによって定式化されたcalibrated geometryによって,ホモロジー類の中で体積を最小化する部分多様体の例が豊富に与えられる. 本講演では,このアイディアを多様体間の滑らかな写像に対して拡張し,その具体例や応用を紹介する.

11月13日(月) 15:15~16:30 (オンライン)

河井 公大朗 氏(北京雁栖湖応用数学研究院)

タイトル: 極小部分多様体のミラーと単調性公式

概要: リーマン多様体上のエルミート直線束のエルミート接続に対して,「体積」が定義できる. これはある状況下で,通常の部分多様体の体積の「ミラー」とみなせるものである. この臨界点である極小接続は,極小部分多様体の「ミラー」と考えることもでき,またYang-Mills接続の類似とも思える. 本講演では,極小接続のいくつかの性質を紹介したのち,ある種の単調性公式が成り立つことを述べる.

10月30日(月) 15:15~16:30 (ハイブリッド)

竹内 有哉 氏(筑波大学)

タイトル: 球面的CR多様体のKohn-Rossiコホモロジー

概要: Kohn-RossiコホモロジーはDolbeaultコホモロジーのCR多様体版に当たるものであり,CR幾何における基本的な不変量の1つである. 今回の講演では球面的CR多様体という局所的に球面とCR同型であるようなCR多様体に対するKohn-Rossiコホモロジーの消滅定理について紹介する. その証明にはPatterson-Sullivan測度を用いて定義される接触形式とWeitzenböck型の公式を用いる.

2022年度

3月7日(火) 15:15~16:45 Zoom

久本 智之 氏(東京都立大学)

タイトル: 代数多様体の最適退化に対応する幾何学的フローと、その漸近的構成について

概要: K半安定でないFano多様体に対してDonaldson-二木不変量を最小化するようなテスト配位を最適退化と呼ぶ。最適退化はKähler-Ricci流やCalabi流と呼ばれる幾何学的フローの代数的な対応物になっている。この講演では、最適退化と各種幾何学的フローの関係について解説する。また、幾何学的量子化を用いてこれらのフローを漸近的に構成する試みを紹介する。

2月21日(火) 15:15~16:45 Zoom

伊敷 吾郎 氏(筑波大学)

タイトル: 超弦理論と幾何学の量子化

概要: 超弦理論は全ての素粒子の運動を統一的に記述する量子論として提案されました。しかし現在までのところ、超弦理論は摂動的な定式化しか完成しておらず、非摂動的な定式化の構成が課題となっています。近年、超弦理論の非摂動的定式化の候補として、有限サイズの行列を自由度とした定式化が盛んに研究されています。従来の定式化では弦やD-braneの運動(形状や軌跡等)は微分幾何学を使って記述されていましたが、行列を用いた新しい定式化では、それが行列の内部自由度を用いて記述されると考えられています。このように行列を使って幾何学を記述することは、幾何学の量子化という観点から理解することができます。本講演ではまず、超弦理論や行列を用いた定式化を簡単に紹介します。その後、背景にある幾何学の量子化(Berezin-Toeplitz量子化)について説明を行い、その量子化に関連した最近の研究について紹介します。

2月8日(水) 15:15~16:45 Zoom

村上 怜 氏(東北大学)

タイトル: ファイバー空間上のJ-方程式

概要: Kahler幾何において,定スカラー曲率Kahler計量(cscK計量)の存在問題は一つの中心的問題である.Dervan-Sektnanは,正則沈め込みの全空間上で,底空間とファイブレーションに関する適切な仮定の下,cscK計量の存在を示した.また J-方程式とは,cscK計量の存在問題の研究において S.K.Donaldson と X.X.Chen により導入された偏微分方程式である.ある条件下では J-方程式の解の存在は cscK 計量の存在を意味するなど標準計量と関係があり注目されている.本講演では,J-方程式に関するDervan-Sektnan型の結果が得られたのでそれを紹介する.

12月13日(火) 15:15~16:45 Zoom

佐々木 優 氏(東京高専)

タイトル: 結合的グラスマン多様体の部分多様体

概要: G型対称空間である結合的グラスマン多様体は四元数ケーラー構造を持つことが知られている.最近,Enoyoshi-Tsukadaにより6次元球面のラグランジュ部分多様体から結合的グラスマン多様体への調和はめ込みが構成された.本講演では,6次元球面の概複素部分多様体から結合的グラスマン多様体への全複素調和はめ込みの構成を紹介する.また同様な議論により,3次元CR部分多様体から結合的グラスマン多様体への,概複素はめ込みのアナロジーとしての“CRはめ込み”を構成することができたのでこれも紹介する.さらに結合的グラスマン多様体において,Enoyoshi-Tsukadaにより極地と呼ばれる全測地的部分多様体がある全複素はめ込みの像になることが示された.本講演では,結合的グラスマン多様体において等長変換群のイソトロピー群の作用における多くの軌道が,あるCRはめ込みの像になり,特に全複素はめ込みと似た性質を有することを紹介する.

6月14日(火) 15:15~16:15 Zoom

石原 秀樹 氏(大阪公立大学)

タイトル: 接触構造を用いたEinstein方程式の解

概要: Lorentz計量をもつ4次元時空のEinstein方程式の解は,我々の住む宇宙の構造を記述していると考えられるが,Einstein方程式とその源となる物質の運動方程式を連立して解を求めることは多くの場合困難である.本セミナーでは,3次元空間を佐々木空間と仮定することにより,多粒子からなる重力源が空間的な非一様性をもつことを許す解の構成について紹介する.

6月7日(火) 15:15~16:45 Zoom

照屋 道文 氏(東京工業大学)

タイトル: 概接触多様体のツイスター空間

概要: 4次元Riemann多様体に対して、$\beta$-曲面と呼ばれる2次元部分多様体を定義できる。$\beta$-曲面がなす空間は6次元の多様体であり、その上には自然な概複素構造が存在する。この概複素構造が可積分であるための必要十分条件は、もとのRiemann多様体が自己双対なことである。したがって、4次元自己双対多様体から3次元複素多様体が構成できる。この複素多様体をツイスター空間と呼ぶ。本セミナーでは、5次元Riemann多様体とその上の1形式から、ツイスター空間の類似物を構成する研究を紹介する。

5月10日(火) 15:15~16:45 Zoom

佐野 太郎 氏(神戸大学)

タイトル: Infinitely many families of Sasaki-Einstein metrics on spheres

概要: (奇数次元の)Riemann多様体はその計量錐がKahler多様体になる時,佐々木多様体と呼ばれる.佐々木多様体は微分幾何や数理物理においてよく研究され,その上のEinstein計量の存在は興味深い問題である.典型例として球面があり,球面上には標準的なもの以外にも様々なEinstein計量が構成されてきた.Boyer--Galicki--KollarはBrieskorn-Pham特異点のlinkとしての球面の表示を用いて,球面上に多くの佐々木-Einstein計量の族を構成した.彼らは球面上に無限個の族が存在することを予想し,また同様に現れるエキゾチック球面上の佐々木-Einstein計量の存在も予想した.本講演では,Brieskorn-Pham型の重み付きFano超曲面上のKahler-Einstein計量の存在判定からそれらの予想が得られる,ということについて話す.本講演の内容は, Yuchen Liu氏, Luca Tasin氏との共同研究に基づく.

2021年度

12月14日(火) 15:15~16:45 Zoom

佐々木 優 氏(東京高専)

タイトル: 例外型コンパクトリー群 $E_6$ および関連する対称空間の極大対蹠集合

概要: コンパクト対称空間で定義される対蹠集合は,トポロジーをはじめとした対称空間上の様々な数理と関連を持つことが指摘されており, 近年様々な研究がなされている.しかしながら,全てのコンパクト対称空間においてその極大対蹠集合の分類・構成が完成しているわけではない. とくに例外型に関しては極大対蹠集合の様子が全く分かっていない場合もある.本講演では,例外型コンパクトリー群 $E_6$ ならびに $E_6$ の等質空間として与えられるEI型から EIV型コンパクト対称空間において極大対蹠集合の分類・構成を紹介する. また,極大対蹠集合の各元をより具体的に記述するため,EI型からEIV型コンパクト対称空間に関しては複素例外ジョルダン代数を用いた 幾何的実現も構成したため,これらの実現も紹介する.

12月7日(火) 15:15~16:45 Zoom

相野 眞行 氏(理化学研究所)

タイトル: 滑らかとは限らない部分多様体におけるLaplacian Eigenmapsの収束とそのレート

概要: Laplacian Eigenmapsはラプラシアンの固有関数を用いた次元削減の手法であり, ユークリッド空間の適切な仮定を満たす部分多様体上に $n$ 個のデータがランダムに得られている際の Laplacian Eigenmapsの,n→∞としたときの連続極限はリーマン多様体のラプラシアンの固有関数を与える. このような研究はこれまで,部分多様体に対してリーチと呼ばれる量を下から抑えるといった仮定の下で行われてきた. リーチの下からの評価は内在的には断面曲率の上下からの評価および単射半径の下からの評価を導き, 更に微分不可能な点を持つ部分多様体は,一様なリーチの下からの評価を満たす部分多様体列では近似しえない. このようにリーチの仮定は部分多様体に強い条件を課すが,本講演では内在的には同様の仮定を置きつつ, リーチの仮定を,極限に微分不可能な点が現れうるような弱い仮定に置き換えた場合のLaplacian Eigenmapsの 収束およびそのレートについて述べる.

11月9日(火) 15:15~16:45 Zoom

永野 幸一 氏(筑波大学・数学域)

タイトル: Asymptotic topological regularity of CAT(0) spaces

概要: CAT(0)空間は大域的にAlexandrovの意味で曲率が0以下である測地的距離空間として定義される. 例えば,連結な完備リーマン多様体がCAT(0)空間であることと,アダマール多様体である, すなわち非正断面曲率をもつ単連結な完備リーマン多様体であることは同値である. この場合,Cartan-Hadamardの定理よりユークリッド空間に微分同相である. その一方で,CAT(0)空間は位相多様体であってもユークリッド空間に同相であるとは限らない. 本講演では「CAT(0)空間がいつユークリッド空間に同相になるか」という CAT(0)空間の位相正則性の 問題に関する研究成果について報告する. より具体的には「CAT(0)空間は小さなユークリッド的体積増大度を持てば ユークリッド空間に同相である」ことを主張する漸近的位相正則性定理について紹介する. (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。)

10月19日(火) 15:15~16:45 Zoom

富久 拓磨 氏(早稲田大学)

タイトル: Rarita-Schwinger作用素について

概要: 重力微子を表すRarita-Schwinger場と,それを記述するために用いられるRarita-Schwinger作用素は 物理学において研究されてきた.いわゆるスピン3/2版のDirac作用素であるRarita-Schwinger作用素は, 近年,数学においても研究が行われている.本講演の前半では,Rarita-Schwinger作用素と Rarita-Schwinger場の定義と基本的な性質について紹介する. 後半では,Rarita-Schwinger作用素に関する2つの結果「コンパクト対称空間上のRarita-Schwinger作用素の 固有値(本間泰史氏との共同研究)」,「nearly Kähler多様体上のRarita-Schwinger場 (大野走馬氏との共同研究)」について説明したい.

8月3日(火) 15:15~16:45 Zoom

濱中 翔太 氏(中央大学)

タイトル: スカラー曲率に関する各点及びある積分量が有界な閉多様体上のリッチフロー

概要: この講演では、ある幾何学的な量が有界であるような閉多様体上のリッチフローについて説明する。 その量は大きく分けて二つで、共にスカラー曲率に関する量である。具体的には、それらの制限の下で そのリッチフローの最大存在時間の近くでの挙動がどうなるか、という問題を考える。 Di-Matteoは、時間と空間の混合ノルムを用いた量で表されるある積分量が有界であることがそのフローが 滑らかに拡張可能であるための十分条件になっていることを示した。 このノルムはパラメーター $\alpha, \beta \in (1, \infty)$ で表されるものである。 講演の前半では、このDi-Matteoの結果の特異な場合、特に次元が4で、 $(\alpha, \beta)=(p, +\infty)$ $(p > 2)$ かつ $(+\infty, 1)$ に対応する場合には、 ある意味でのリッチフローの拡張可能定理が成り立つことを説明する。 また残りの時間で、スカラー曲率が(各点で)有界であるという条件についてもお話ししたいと思う。

7月20日(火) 15:15~16:45 Zoom

田崎 博之 氏(筑波大学・数学域)

タイトル: コンパクト対称空間の極大対蹠集合

概要: コンパクト対称空間の対蹠集合の概念の基本事項について解説し、対蹠集合と他の概念の関連性、 極大対蹠集合を具体的に記述する方法について述べる。 さらにこの方法を コンパクト対称空間 $UI(n)=U(n)/O(n)$ とその商空間に適用して最近得た田中真紀子さんとの 共同研究の結果を紹介する。 (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。)

6月15日(火) 15:15~16:45 Zoom

高橋 良輔 氏(九州大学 数理学研究院 数学部門)

タイトル: Deformed-Hermitian-Yang-Mills方程式について

概要: 微分幾何学の根底にある重要な問題の1つとして,幾何構造の標準化がある. 特にシンプレクティック多様体の場合,特殊ラグランジュ部分多様体はそのホモロジー類の中で 体積最小という意味で標準的であり,その存在は何らかの安定性と同値であることが 予想されている(Thomas-Yau予想).一方で,deformed-Hermitian-Yang-Mills (dHYM)方程式は, Strominger-Yau-Zaslowミラー対称性を通して,特殊ラグランジュ部分多様体を複素多様体上の直線束上の fiber計量として記述する方程式であり,数学の分野ではLeung-Yau-Zaslowによって初めて導入された. 本講演では,dHYM方程式の研究がThomas-Yau予想に対してどのようなアプローチを提供するのかを, 講演者自身の結果(主に幾何学的フロー)も紹介しながら説明する. (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。)

6月8日(火) 15:15~16:45 Zoom

三浦 達哉 氏(東京工業大学 理学院 数学系)

タイトル: 曲線の曲げエネルギーと自己交叉

概要: Li-Yau は 1982 年に閉曲面の曲げエネルギーと多重度に関する最適な不等式を導出した。 ただしこの結果は曲面の二次元性に強く依存するものである。本講演では最近得られた一次元曲線に 対する Li-Yau 型不等式を紹介し、二次元の場合と様相が大きく異なることを観察する。 また弾性流・弾性ネットワーク・弾性結び目理論などへの応用や展望についても可能な限り触れたい。 (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。)

5月25日 (火) 15:15~16:45 Zoom

小野 肇 氏(筑波大学・数学域)

タイトル: Einstein-harmonic 方程式とスカラー曲率一定 Kähler 計量

概要: LeBrunは、複素曲面上で、電磁場付きのEinstein 方程式(Einstein-Maxwell 方程式)と 共形Kähler なスカラー曲率一定計量(今日では共形Kähler, Einstein-Maxwell 計量(cKEM計量と略す)と 呼ばれている)との関係を明示した。その後、Kähler 幾何において、cKEM計量やその一般化は興味深い 研究対象の1つとなり、様々な結果が得られている。しかしながら、cKEM計量は高次元では Einstein-Maxwell 方程式と直接関係はなく、「Einstein方程式の解を求める」という観点からは 特に進展は見られなかった。今回の講演では、複素次元が偶数の場合に、スカラー曲率一定Kähler 計量から 物質場(微分形式)付きのEinstein 方程式(Einstein-harmonic 方程式と呼ぶ)の 解が得られることを紹介する。

4月28日 (水) 15:15~16:45 Zoom

山本 光 氏(筑波大学・数学域)

タイトル: 変形エルミート・ヤン・ミルズ接続の基礎と最近の研究

概要: 2000年にLeung-Yau-Zaslowによって(限定的な状況ではあったが) 「特殊ラグランジュ部分多様体(sLag)を実フーリエ向井変換すると 変形エルミート・ヤン・ミルズ接続(dHYM)というものになる」ということが示された. 従ってdHYMの重要性とSLagの重要性が等価であることが分かった. しかしながらdHYMの研究はSLagの研究に比べて非常に少なかった. しかし,2017年ごろから急速に研究が進み,深い結果や予想が提示され始めた. この講演の前半ではdHYMの定義の意味や基本的な性質を初学者にもなるべく分かりやすく伝えることに集中する. 後半では講演者の結果も交えつつ(様々な研究者によって)示されたことと示されていないことについての サーベイを行う. (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。)