この講義では Riemann ゼータ関数について, 全くの初歩から初めて, 出来る限り最近の話題にまで到達するような話をしたいと思っています。従って基本方針として, 証明はあまり細部にはこだわらず, アイデアが浮彫りになればそれで十分, といった解説をするつもりです。
今年の夏に広島県のとある島で開かれた整数論のサマースクールで, 私は似たような講義をしました。そのときの講義の原稿は, TeX file として私の手元にあり, いずれサマースクールの報告集にも載る予定ですが, この原稿を怠惰にも今回の集中講義の種本として再利用致します。従ってあのサマースクールに出席して私の講義を聞いた人は, 今回の集中講義に出る意味は全くありません。この原稿の目次をリストアップしてみると,

1. はじめに
2. Euler 積, 解析接続, 関数等式
3. 素数定理と Riemann 予想
4. Zero-free region と普遍性
5. 近似関数等式と order 評価
6. Voronoi 公式と Jutila の方法
7. 平均値定理
8. 臨界線上の零点
9. 零点密度理論

です。要するに中心テーマは critical strip での Riemann ゼータ関数の解析的な性質とその数論的な応用です。