名古屋大学 集中講義

有理性判定条件とその応用

天羽雅昭

(群馬大学・工学部)


日時 2000年12月10・11・13・14日
   15:00〜17:00

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講義内容

与えられたべき級数が有理関数を表すか否かを知ることは,それ自体が興味深い問題である一方,他の問題を解く上でキ−ポイントになることもしばしばである.そこで,べき級数が有理関数を表すか否かを判定する簡明な判定条件があれば大変便利である.この方向での初期の成果として,Borel による次の判定条件がある.整数係数のべき級数は収束半径が高々 1 であるが,もし,この級数が 1 より大きな半径の円板まで有理形に解析接続されるならば,それは有理関数を表す.この結果では,べき級数が表す関数は複素関数としてのみ考察されているが,Dwork は p-進関数としての情報も取り入れることで,現在 Borel-Dwork の判定条件と称せられる結果へと一般化した.その有名な応用が,有限体上の代数多様体のゼ−タ関数が有理関数であることの証明である.

有理性判定条件は,種々の問題に応用されているが,近年になって,新たに超越数論(無理数論)への応用も見い出された(Bezivin [3] および Bezivin and Robba [4]).例えば,[4] では,指数関数値の代数的独立性についての Lindemann-Weierstrass の定理を含む結果が,有理性判定条件を使って証明されている.

本講義では,先ず,上記の Borel による判定条件を証明する.続いて,p-進解析についての基本事項を準備してから,Borel-Dwork の判定条件を証明する.さらに,その超越数論(無理数論)への応用を,主に文献 [3] および [4] に従って展開する予定である.



基礎知識

必要な知識は,学部で習う範囲をほとんど出ない.p-進解析の初歩について知っていることが望ましいが,必要な事柄については講義の中で述べる積もりである.



参考書および文献

[1] Y. Amice, Les nombre p-adiques, Presses Universitaire de France, collection SUP 14,
 Paris, 1975.

[2] Y. Andre, G-functions and Geometry, Aspects of Mathematics E3, Viehweg,
 Braunschweig/Wiesbaden, 1989.

[3] J. P. Bezivin, Independance lineaire des valeurs des solutions transcendantes de
 certaines equations fonctionnelles, Manuscripta Math. 61 (1988), 103-129.

[4] J. P. Bezivin and P. Robba, A new p-adic method for proving irrationality and
 transcendence results, Ann. of Math. 129 (1989), 181-192.